( 1 )「阿修羅」は仏語本来の意味用法に止まるが、「修羅」は派生義を生じ、多くの熟語や成語の成分となった。謡曲の修羅物(「風姿花伝‐二」)などに典型が見られるように、戦乱闘争の世相の表現に用いられる。
( 2 )[ 二 ]④は中世古辞書「壒嚢鈔‐一」(一四四五‐四六)によると、「大石」の字音「タイシャク」に「帝釈」を掛け、修羅が帝釈天と戦う神であるというところから、大石を引く道具に、「修羅」を連想した命名であるという。
阿修羅(あしゅら)の略。帝釈天(たいしゃくてん)に戦いを挑む悪神の意から、大石(たいしゃく)を動かす修羅車、船下ろしの「ころ」など、中世以降さまざまな器具や装置の名称になる。考古学では、1978年(昭和53)大阪府藤井寺市の三ツ塚古墳の濠底(ごうてい)から発掘されたY字形の木製そりをさす。長さ8.8メートルと2.9メートルの大小二つの木製そりが出土し、アカガシの巨木を使った大型修羅は復原実験によって巨石運搬具と推定されている。修羅の出土地は、土師(はじ)氏の一根拠地であった河内(かわち)国志紀郡土師郷にあり、古墳時代後期か終末期のものであろう。
[森 浩一]
山腹の斜面を利用した一時的な木材搬出用の滑走路を修羅といい、集運材法の一つ。修羅には、勾配(こうばい)を利用して木材の自重により降下させる重力式がおもに使われるが、まれには畜類などで丸太修羅上を引く牽引(けんいん)式もある。現在では、集材機の発達によりみられなくなった。構造によって、土(ど)修羅、木(き)修羅、水(みず)修羅などに分けられる。土修羅は山腹の凹部をそのまま利用したもので、材木の損傷が大きく、用材搬出には適さない。木修羅はもっとも一般的なもので、丸太だけを使ったものと厚板を併用したいわゆる桟手(さで)がある。桟手はおもに木曽(きそ)地方で行われていた運搬装置である。普通は野良(のら)桟手と称し急勾配の斜面に架設され、木材の滑走面に厚板(野良板)を用いるのが基本であるが、野良板のかわりに小丸太を数本並べたり、切り取った木の板(粗朶(そだ))を編んだ桟手など地方によっていろいろみられる。また水修羅は、谷水をせき止めて材木の滑走に利用する運材法である。
[松田昭二]
(1)木製橇(そり)形の石材運搬用具。大石(たいしやく)の下に使うので帝釈天の下に踏みつけられた阿修羅になぞらえた石材業者の用語。1978年大阪府藤井寺市道明寺の仲津媛陵の南に並ぶ三っ塚古墳の東と中央の方形墳の中間の堀の底に掘った土坑の底からアカガシ材の二またを使った長さ8.8mのV字形の修羅が出土した。同時に長さ2.9mの小型の同形の修羅と,長さ6mのてこ状の棒が伴出した。その南の応神陵をはじめとする5世紀の古市古墳群の大規模な土木工事はこのような巨大な石材運搬具を用いた大工事であったことを実感させる遺品である。
執筆者:坪井 清足(2)林業では,数本の丸太を急な谷筋に沿って凹管状に並列した運材用滑路を修羅chute(またはslide)という。地形の関係で曲線部が生ずる場合減速して方向転向させるための設備や,終点部で減速停止させるための設備が必要である。厚板や小丸太を並列して平底とし両側に防材を備えたものを桟手(さで)という。集運材機械がまだ発達していない頃は経費のかからない運材法として用いられたが,材の損耗が激しいうえ危険を伴うので用いられなくなった。
執筆者:上飯坂 実
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