修羅(読み)しゅら

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

修羅
しゅら

中世から近世にいたるまで巨石運搬用に用いられた木ぞり。中世以後,「修羅」と呼ばれ,大坂城江戸城などの築城に関する多くの文献や築城図・石曳図が残され,近来まで山奥の巨木を切りおろすのに使われていた。修羅の名は,阿修羅帝釈天と争って勝ったという仏典の故事から「帝釈 (大石) を動かせるのは修羅」に由来するといわれる。近世の築城図には,ころとてこを用い,多勢の男が綱を引き,石の上の男はほら貝や太鼓で音頭をとるさまが描かれている。これらの修羅ところの使用によって摩擦抵抗が小さくなり,たとえば 30tの石が数十人から 100人までで運搬できるほか,方向操作も容易になる。 1978年4月に,大阪府藤井寺市の古墳の堀から長さ 8.8mの舟型のカシの木ぞりと同型の小型のものが発掘され,その形,ほぞ穴の配置などから中世の「修羅」の原型に違いないとされて,古代史とその土木技術の謎を解く貴重な手掛りとなるとともに,古代人の知恵と壮大さが話題を呼んだ。

修羅
しゅら

阿修羅」のページをご覧ください。

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世界大百科事典 第2版の解説

しゅら【修羅】

(1)木製橇(そり)形の石材運搬用具。大石(たいしやく)の下に使うので帝釈天の下に踏みつけられた阿修羅になぞらえた石材業者の用語。1978年大阪府藤井寺市道明寺の仲津媛陵の南に並ぶ三っ塚古墳の東と中央の方形墳の中間の堀の底に掘った土坑の底からアカガシ材の二またを使った長さ8.8mのV字形の修羅が出土した。同時に長さ2.9mの小型の同形の修羅と,長さ6mのてこ状の棒が伴出した。その南の応神陵をはじめとする5世紀の古市古墳群の大規模な土木工事はこのような巨大な石材運搬具を用いた大工事であったことを実感させる遺品である。

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大辞林 第三版の解説

しゅら【修羅】

○
〘仏〙「阿修羅あしゆら」の略。
〘仏〙「修羅道しゆらどう」の略。
激しい戦闘。闘争。争い。 「 -の妄執」
大石・大木などを運搬する車。修羅車ぐるま
滑道の一。丸太を縦に並べて半円形の溝を作り、その中を滑らせる木材運搬の方法。

すら【修羅】

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精選版 日本国語大辞典の解説

しゅら【修羅】

[1] (「あしゅら(阿修羅)」の略) 仏語。常に帝釈天と戦っている悪神。須彌山の下の海底に住むという。
※今昔(1120頃か)四「餓鬼道に堕ぬと見れば修羅に成ぬ」
[2] 〘名〙
① 仏語。「しゅらどう(修羅道)」の略。
※山家集(12C後)中「修羅 よしなしな争ふことを楯にして瞋(いかり)をのみも結ぶ心は」
② 嫉妬、猜疑(さいぎ)から起こる争い。また、長い闘争、戦争、激しい怒り、情念などのたとえ。
※謡曲・八島(1430頃)「春の夜の潮の落つる暁ならば修羅の時になるべし。その時はわが名や名のらん」
※浄瑠璃・奥州安達原(1762)二「海商売とてどこの男も磯ぜせり、こちとらも修羅はたえぬと、三人寄れば男の噂」
③ 演劇で、闘争の場面。修羅場
※浮世草子・西鶴名残の友(1699)五「嘉太夫ふじのしゅらを語る程に」
④ 「しゅらぐるま(修羅車)」の略。〔文明本節用集(室町中)〕
※随筆・嬉遊笑覧(1830)二下「金銀の塊りをしゅらに載せ五六百人にて挽出すと云り」
※随筆・嬉遊笑覧(1830)二下「何にまれ石を載る舟をば修羅と呼ぶ」
⑥ 船おろしまたは船を陸へ引き上げるとき、転(ころ)が回りやすいように地上に敷く厚い板。修羅板。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※関船製造法律並に御船魂祭文(1883)「船行に修羅と云て〈略〉厚壱寸五六歩の板を」
⑦ 伐木山からの運材装置の一つ。山の勾配と原木の自重を利用して、原木を自動的に谷合いの流送基地まで山おろしする装置をいう。
※木曾式伐木運材図絵(1857)「山落しの修羅は」
[語誌](1)「阿修羅」は仏語本来の意味用法に止まるが、「修羅」は派生義を生じ、多くの熟語や成語の成分となった。謡曲の修羅物(「風姿花伝‐二」)などに典型が見られるように、戦乱闘争の世相の表現に用いられる。
(2)(二)④は中世古辞書「壒嚢鈔‐一」(一四四五‐四六)によると、「大石」の字音「タイシャク」に「帝釈」を掛け、修羅が帝釈天と戦う神であるというところから、大石を引く道具に、「修羅」を連想した命名であるという。

すら【修羅】

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