修羅(読み)シュラ

デジタル大辞泉 「修羅」の意味・読み・例文・類語

しゅら【修羅】

阿修羅あしゅら」の略。

修羅道」の略。
醜い争い果てしのない闘い、また激しい感情のあらわれなどのたとえ。
大石・大木などを運搬する道具そり一種修羅車しゅらぐるま

すら【修羅】

しゅら(修羅)

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精選版 日本国語大辞典 「修羅」の意味・読み・例文・類語

しゅら【修羅】

  1. [ 1 ] ( 「あしゅら(阿修羅)」の略 ) 仏語。常に帝釈天と戦っている悪神。須彌山の下の海底に住むという。
    1. [初出の実例]「餓鬼道に堕ぬと見れば修羅に成ぬ」(出典:今昔物語集(1120頃か)四)
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙
    1. 仏語。「しゅらどう(修羅道)」の略。
      1. [初出の実例]「修羅 よしなしな争ふことを楯にして瞋(いかり)をのみも結ぶ心は」(出典:山家集(12C後)中)
    2. 嫉妬、猜疑(さいぎ)から起こる争い。また、長い闘争、戦争、激しい怒り、情念などのたとえ。
      1. [初出の実例]「春の夜の潮の落つる暁ならば修羅の時になるべし。その時はわが名や名のらん」(出典:謡曲・八島(1430頃))
      2. 「海商売とてどこの男も磯ぜせり、こちとらも修羅はたえぬと、三人寄れば男の噂」(出典:浄瑠璃・奥州安達原(1762)二)
    3. 演劇で、闘争の場面。修羅場
      1. [初出の実例]「嘉太夫ふじのしゅらを語る程に」(出典:浮世草子・西鶴名残の友(1699)五)
    4. しゅらぐるま(修羅車)」の略。〔文明本節用集(室町中)〕
      1. [初出の実例]「金銀の塊りをしゅらに載せ五六百人にて挽出すと云り」(出典:随筆・嬉遊笑覧(1830)二下)
    5. しゅらぶね(修羅船)」の略。
      1. [初出の実例]「何にまれ石を載る舟をば修羅と呼ぶ」(出典:随筆・嬉遊笑覧(1830)二下)
    6. 船おろしまたは船を陸へ引き上げるとき、転(ころ)が回りやすいように地上に敷く厚い板。修羅板。〔日葡辞書(1603‐04)〕
      1. [初出の実例]「船行に修羅と云て〈略〉厚壱寸五六歩の板を」(出典:関船製造法律並に御船魂祭文(1883))
    7. 伐木山からの運材装置の一つ。山の勾配と原木の自重を利用して、原木を自動的に谷合いの流送基地まで山おろしする装置をいう。
      1. [初出の実例]「山落しの修羅は」(出典:木曾式伐木運材図絵(1857))

修羅の語誌

( 1 )阿修羅」は仏語本来の意味用法に止まるが、「修羅」は派生義を生じ、多くの熟語や成語の成分となった。謡曲の修羅物(「風姿花伝‐二」)などに典型が見られるように、戦乱闘争の世相の表現に用いられる。
( 2 )[ 二 ]は中世古辞書「壒嚢鈔‐一」(一四四五‐四六)によると、「大石」の字音「タイシャク」に「帝釈」を掛け、修羅が帝釈天と戦う神であるというところから、大石を引く道具に、「修羅」を連想した命名であるという。


すら【修羅】

  1. 〘 名詞 〙しゅら(修羅)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「修羅」の意味・わかりやすい解説

修羅(器具、装置)
しゅら

阿修羅(あしゅら)の略。帝釈天(たいしゃくてん)に戦いを挑む悪神の意から、大石(たいしゃく)を動かす修羅車、船下ろしの「ころ」など、中世以降さまざまな器具や装置の名称になる。考古学では、1978年(昭和53)大阪府藤井寺市の三ツ塚古墳の濠底(ごうてい)から発掘されたY字形の木製そりをさす。長さ8.8メートルと2.9メートルの大小二つの木製そりが出土し、アカガシ巨木を使った大型修羅は復原実験によって巨石運搬具と推定されている。修羅の出土地は、土師(はじ)氏の一根拠地であった河内(かわち)国志紀郡土師郷にあり、古墳時代後期か終末期のものであろう。

[森 浩一]

林業の修羅

山腹の斜面を利用した一時的な木材搬出用の滑走路を修羅といい、集運材法の一つ。修羅には、勾配(こうばい)を利用して木材の自重により降下させる重力式がおもに使われるが、まれには畜類などで丸太修羅上を引く牽引(けんいん)式もある。現在では、集材機の発達によりみられなくなった。構造によって、土(ど)修羅、木(き)修羅、水(みず)修羅などに分けられる。土修羅は山腹の凹部をそのまま利用したもので、材木の損傷が大きく、用材搬出には適さない。木修羅はもっとも一般的なもので、丸太だけを使ったものと厚板を併用したいわゆる桟手(さで)がある。桟手はおもに木曽(きそ)地方で行われていた運搬装置である。普通は野良(のら)桟手と称し急勾配の斜面に架設され、木材の滑走面に厚板(野良板)を用いるのが基本であるが、野良板のかわりに小丸太を数本並べたり、切り取った木の板(粗朶(そだ))を編んだ桟手など地方によっていろいろみられる。また水修羅は、谷水をせき止めて材木の滑走に利用する運材法である。

[松田昭二]


修羅(阿修羅)
しゅら

阿修羅

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改訂新版 世界大百科事典 「修羅」の意味・わかりやすい解説

修羅 (しゅら)

(1)木製橇(そり)形の石材運搬用具。大石(たいしやく)の下に使うので帝釈天の下に踏みつけられた阿修羅になぞらえた石材業者の用語。1978年大阪府藤井寺市道明寺の仲津媛陵の南に並ぶ三っ塚古墳の東と中央の方形墳の中間の堀の底に掘った土坑の底からアカガシ材の二またを使った長さ8.8mのV字形の修羅が出土した。同時に長さ2.9mの小型の同形の修羅と,長さ6mのてこ状の棒が伴出した。その南の応神陵をはじめとする5世紀の古市古墳群の大規模な土木工事はこのような巨大な石材運搬具を用いた大工事であったことを実感させる遺品である。
執筆者:(2)林業では,数本の丸太を急な谷筋に沿って凹管状に並列した運材用滑路を修羅chute(またはslide)という。地形の関係で曲線部が生ずる場合減速して方向転向させるための設備や,終点部で減速停止させるための設備が必要である。厚板や小丸太を並列して平底とし両側に防材を備えたものを桟手(さで)という。集運材機械がまだ発達していない頃は経費のかからない運材法として用いられたが,材の損耗が激しいうえ危険を伴うので用いられなくなった。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「修羅」の意味・わかりやすい解説

修羅
しゅら

中世から近世にいたるまで巨石運搬用に用いられた木ぞり。中世以後,「修羅」と呼ばれ,大坂城,江戸城などの築城に関する多くの文献や築城図・石曳図が残され,近来まで山奥の巨木を切りおろすのに使われていた。修羅の名は,阿修羅が帝釈天と争って勝ったという仏典の故事から「帝釈 (大石) を動かせるのは修羅」に由来するといわれる。近世の築城図には,ころとてこを用い,多勢の男が綱を引き,石の上の男はほら貝や太鼓で音頭をとるさまが描かれている。これらの修羅ところの使用によって摩擦抵抗が小さくなり,たとえば 30tの石が数十人から 100人までで運搬できるほか,方向操作も容易になる。 1978年4月に,大阪府藤井寺市の古墳の堀から長さ 8.8mの舟型のカシの木ぞりと同型の小型のものが発掘され,その形,ほぞ穴の配置などから中世の「修羅」の原型に違いないとされて,古代史とその土木技術の謎を解く貴重な手掛りとなるとともに,古代人の知恵と壮大さが話題を呼んだ。

修羅
しゅら

阿修羅」のページをご覧ください。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「修羅」の解説

修羅 しゅら

阿修羅(あしゅら)

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百科事典マイペディア 「修羅」の意味・わかりやすい解説

修羅【しゅら】

阿修羅

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