改訂新版 世界大百科事典 「半導体放射線検出器」の意味・わかりやすい解説
半導体放射線検出器 (はんどうたいほうしゃせんけんしゅつき)
semiconductor detector
高エネルギーの荷電粒子は,シリコンSi,ゲルマニウムGeなどの半導体の中で多くの電子と正孔(ホール)との対を生成する。これらの電子と正孔をそれぞれ陽極と陰極に集めて,その際に生ずる電気信号を外部の電子回路にとり出すようにつくられた放射線検出器である。荷電粒子の入射によって生じた電子と正孔との対が,再結合を起こして消失することなく電極に収集されるためには,強い電界が必要である。検出器の両電極の間にある有感領域と呼ばれる領域は高い電気抵抗をもっており,そのため強い電界が生じている。半導体検出器は,高抵抗領域の構造とその製作技術などの違いから,(1)拡散接合型,(2)表面障壁型,(3)Liドリフト型,(4)高純度半導体型に大別される。半導体として,シリコンまたはゲルマニウムを用いたものが多いが,ヒ化ガリウムGaAs,テルル化カドミウムCdTe,ヨウ化水銀(Ⅱ)HgI2などの化合物半導体を用いたものもある。α線に対しては,拡散接合型または表面障壁型検出器,β線に対してはシリコンを用いたLiドリフト型または高純度半導体型検出器,γ線に対してはゲルマニウムを用いたLiドリフト型または高純度半導体型検出器が用いられることが多い。半導体放射線検出器は,他の放射線検出器に比べて小型で,エネルギー分解能がよい,動作が速いなどの特徴をもっている。
執筆者:山下 幹雄
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