出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
絶縁体は導体と同程度の密度の電子を含むにもかかわらず電流を通さない。絶縁体においては,そのエネルギー帯がからっぽであるか,あるいは電子によって完全に満たされているからである。後者のいわゆる充満帯の場合,パウリの原理のため,いわば満員であって,電子は身動きできない。しかし充満帯から若干の電子が取り去られると,その抜けた孔を通して電子の移動が可能となる。この場合,電子そのものより,むしろ孔の運動に着目するほうが一般に便利である。充満帯は満たされているとき全体として中性なので,この孔は正電荷をもつもののようにふるまう。そこでこれを正孔と呼ぶ。ホールということもある。正孔は絶縁体中を電荷を別にすれば通常の伝導電子とまったく同じように運動し,電導性に寄与する。ただしホール効果や熱起電力の符号は伝導電子の場合と一般に逆になる。なお,正孔の概念は,バンド理論(バンド構造)の成り立たない液体や非晶質の場合にも使われる。
執筆者:黒沢 達美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ホールともいう.半導体や絶縁体で,価電子結合にあずかっている価電子が励起されて自由電子となった後の結合の抜け孔を正孔とよぶ.エネルギー帯模型では,正孔は価電子帯中に存在し,+eの電荷と,電子と同じ静止質量をもつ仮想的な粒子として取り扱われる.真性半導体では,正孔は自由電子と同数であるが,これにアクセプターとなる不純物を添加することにより,正孔の数のみをいちじるしく増加させて,p型半導体とすることができる.正孔の移動度は電子のそれより小さく,また有効質量は電子のそれより大きい場合が多い.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…すると空席を介しての電子の移動が可能となり,これも電気伝導に寄与する。この場合の事情はむしろ空席の運動に着目するほうが簡単であり,またこの空席は見かけ上正の電荷をもつので,これを正孔(ホール)と呼ぶ。すなわち伝導電子と正孔の両方が電気伝導に寄与するわけである。…
※「正孔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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