原子力衛星(読み)げんしりょくえいせい

改訂新版 世界大百科事典 「原子力衛星」の意味・わかりやすい解説

原子力衛星 (げんしりょくえいせい)

原子力を動力源とする人工衛星で,原子炉を搭載したいわゆる原子炉衛星と,放射性同位体(RI)を搭載したものとの2種類がある。原子炉衛星の場合,原子炉燃料核分裂による熱は,液体金属を作動流体とする蒸気タービンサイクル,あるいは熱電直接変換機thermo-electric converter(略称TEC)によって電力に変えられる。RIでは核壊変によって熱が生じるが,熱の取出し過程に機械的可動部がないので,やはり可動部のないTECを用いて発電をするのが通例である。RIとしては超ウラン元素を中心に,半減期数十年程度のものが各種,対象として取り上げられている。RIは原子炉に比べて出力は小さいが,より長寿命の運転ができる利点をもつ。

 アメリカではSNAP計画として1960年代前半に両タイプの原子力衛星の開発が進められ,出力0.5kWe,TEC方式の原子炉SNAP10Aも打ち上げられたが,その後は宇宙における原子力利用計画は停滞し,宇宙用長時間電力源の主役を太陽電池に譲った形となっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原子力衛星」の意味・わかりやすい解説

原子力衛星
げんしりょくえいせい
nuclear powered satellite

小型の原子炉を積んだ原子炉衛星や,原子力電池を用いる衛星。原子力電池にはプルトニウム 238の放射線のエネルギーを利用する。 1962年以降,ソ連は熱出力 40kWのロマーシュカか同 130~150kWのトパーズ型で,炉内熱電対による発電方式のものを 30基以上打上げた。アメリカは 1960年代から原子力電池衛星 22基を打上げた。また原子炉衛星 SNAP-10A (熱出力 34kW) は 65年に打上げられた。宇宙空間では冷却が困難なため,これまでの衛星用原子炉の出力は 5kW程度だったが,1980年代になりアメリカは SDI計画で電気出力 100kWの原子炉 SP-100を開発した。

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