ウランよりも原子番号の大きい元素,すなわち93番元素以降の元素の総称。1937年,それまで地球上には存在しないと思われていた43番元素がはじめて人工的につくられ,さらに40年ころまでに85番元素や61番元素の製造に成功して以来,天然に存在する最も重い元素のウランよりもさらに重い元素をつくる試みがなされるようになった。そして40年,アメリカのマクミランE.M.McMillanらがウランに中性子を照射して93番元素ネプツニウムをつくり,さらに238Uを重陽子で衝撃して238Npをつくると,これがβ崩壊して94番元素プルトニウムが得られることを見いだした。ただし42年,天然に存在するウラン中にもプルトニウムの存在することが見いだされている。このように93番,94番元素が発見されたことにより,それ以上の超ウラン元素合成の見込みはさらに確実になり,それ以降,超ウラン元素の合成が試みられてきている。現在までに103番元素ローレンシウムまでが国際的に公認されており,104番,105番,106番元素もつくられているが,107番元素の合成も報告されている。それらのうちかなりな量がつくられる方法と,得られたものの半減期は次のようである。
104番元素は1964年ソ連のフレーロフFlerovらが,242Puに22Neのイオンを衝撃して得たとし,これをクルチャトビウムKurtschatoviumと称することを主張している。これに対してはアメリカ学派の反論があり,アメリカにおける合成が正しいとしラザフォージウムRutherfordiumという名称を主張している。105番元素は1967年同じくソ連のフレーロフらによって243Amを22Neで衝撃して得られ,その後アメリカでも別の方法でつくられ,これに対してアメリカからハーニウムHahniumという名称が主張されている。106番元素は1974年アメリカのバークリーBerkley研究所でギオーソGhiorsoらが249Cfを18Oで衝撃して,またソ連のドゥブナ原子核研究所でフレーロフらが銀のターゲットを54Crのイオンで衝撃してつくっている。また76年にはソ連の同研究所のオガネシアンOganesianらはビスマスを54Crのイオンで衝撃して質量数261の107番元素を合成したと報告している。
現在,超ウラン元素は,237Npや239Puではt単位で得られており,238Pu,242Pu,241Am,243Am,244Cmは100gあるいはそれ以上の単位で得られている。また244Pu,252Cf,249Bk,248Cm,253Es,254Esなどはmg量,257Fmはμg量で,その他の長寿命同位体は加速器を用いてトレース量がつくられている。
古くは89Ac,90Th,91Pa,92Uは化学的性質その他からそれぞれ周期表中第Ⅲ,Ⅵ,Ⅴ,Ⅵ族に属すると考えられていたので,93Npも初めはエカレニウムと呼ばれ第Ⅶ族に属するとされたが,むしろウランに似ていることも多いのでウラニドとも呼ばれた。しかし電子構造その他の研究も進み,超ウラン元素が化学的には希土類元素によく似ていることからランタノイド元素に対応することがわかり,89Acから103Lrまでがアクチノイド元素と呼ばれ第ⅢA族希土類元素に属するということになった。したがって周期表では104番元素は第ⅣA族Hfの下,105番元素は第ⅤA族Taの下,106番元素は第ⅥA族Wの下へくることになる。
アクチノイド元素原子の最外殻電子配置はランタノイド元素によく対応している。したがって+3価イオンのイオン半径では原子番号増大にしたがって同じように減少する傾向がみられる。またイオン交換クロマトグラフィーに対する挙動もよく対応していて,同じような方法で各イオンを分離することができる。ランタノイド元素と超ウラン元素に含まれるアクチノイド元素との化学的挙動における最も大きな違いは,つくる化合物の酸化数であって,ランタノイド元素が主として酸化数ⅢでわずかにⅡとⅣをとるものがある程度なのに対し,アクチノイド元素のふるまいは非常に複雑である。
→アクチノイド
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
原子番号93番以上の人工放射性元素.1940年以前には自然界に存在する元素のなかで,原子番号92のウランが周期表の最後の元素であったが,原子核反応で93番元素ネプツニウムが見いだされたため,ウランより原子番号の大きい元素を超ウラン元素とよぶようになった.2008年のIUPACの周期表には,111番元素まで記載されている.103番元素ローレンシウムまではアクチノイドに属する元素.104番元素ラザホージウム以降は遷移元素.また,104番以降は超アクチノイド元素ともよばれる.[別用語参照]ネプツニウム,プルトニウム,アメリシウム,キュリウム,バークリウム,カリホルニウム,アインスタイニウム,フェルミウム,メンデレビウム,ノーベリウム,ローレンシウム,ラザホージウム,ドブニウム,シーボーギウム,ボーリウム,ハッシウム,マイトネリウム,ダームスタチウム,レントゲニウム,コペルニシウム,ウンウントリウム,フレロビウム,ウンウンペンチウム,リバモリウム,ウンウンオクチウム
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
原子番号92のウランよりも原子番号の大きい元素の総称であるが、すべてが人工合成された放射性元素である。1940年にアメリカのE・M・マクミランらによって93番元素ネプツニウムが合成されて以来、加速器、原子炉の発達によって、主としてアメリカにおいて次々に103番ローレンシウムまでが合成された。104番以降の元素も超ウラン元素であることに違いはないが、アクチノイドの元素ではなくなる。98番カリホルニウムまでは、化学実験が可能となるマクロ量で得られており、物理的性質や化学的性質の研究が進んでいる。
一般に超――元素とは、その元素より原子番号の大きな元素群をさし、超ウラン元素のなかでも、歴史的経過や便宜のうえで、超プルトニウム元素、超キュリウム元素などとよばれた分類が行われたこともある。104番以降については、超ローレンシウム元素あるいは超アクチノイド元素とよぶこともできる。
[岩本振武]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…天然に存在せず,人工的方法(核反応)によってのみ作り出される元素をいう。ふつう,周期表上原子番号43のテクネチウムTc,61のプロメチウムPm,85のアスタチンAt,87のフランシウムFr,および93のネプツニウムNp以降の諸元素(超ウラン元素)を人工元素とみることが多い。しかし,この定義は厳密なものとはいえない。…
※「超ウラン元素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新