原子力電池(読み)ゲンシリョクデンチ

デジタル大辞泉 「原子力電池」の意味・読み・例文・類語

げんしりょく‐でんち【原子力電池】

半減期の長い放射性同位体が出す放射線エネルギー電気エネルギーに変える仕組みの電池α崩壊を起こすプルトニウム238やポロニウム210が用いられる。寿命が長いため宇宙探査機の電源として搭載されるほか、1960年代に心臓ペースメーカーで利用された。ラジオアイソトープ電池アイソトープ電池RI電池放射線電池

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精選版 日本国語大辞典 「原子力電池」の意味・読み・例文・類語

げんしりょく‐でんち【原子力電池】

  1. 〘 名詞 〙 寿命の長い放射性同位元素が出す放射線のエネルギーを電池エネルギーに変える仕組みの電池。宇宙船などに利用される。アイソトープ電池。〔ついに太陽をとらえた(1954)〕

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百科事典マイペディア 「原子力電池」の意味・わかりやすい解説

原子力電池【げんしりょくでんち】

アイソトープ電池,RI電池とも。人工放射性元素から出る放射線のエネルギーを電気エネルギーに変換する装置pn接合の半導体結晶にβ線を当て接合部に電子と正孔を発生させる,放射線の熱で熱電対の一接点を暖めるなど種々の方法がある。放射線源には半減期が比較的長くてγ線を出さないストロンチウム909(0/)Sr,セリウム144144Ceなどが用いられる。一般に出力は小さいが安定し,長時間持続する。1954年米国のRCAで初めて実験に成功。航空宇宙局で人工天体の補助電源用として活発に開発を進め(SNAP衛星),プルトニウム238238Puポロニウム21021(0/)Po等を用いたものを1961年から人工衛星に使用している。原子力電池は,ほかに心臓のペースメーカー,無人観測機器,標識などにも用いられている。
→関連項目原子力電池放射性同位元素

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改訂新版 世界大百科事典 「原子力電池」の意味・わかりやすい解説

原子力電池 (げんしりょくでんち)
atomic battery
nuclear battery

放射性同位体radioactive isotope(略称RI)から放出される放射線のエネルギーを電気エネルギーに変換するもので,原子電池,アイソトープ電池,RI電池,アイソトープ発電器などと呼ばれることもある。放射線エネルギーが物質に吸収されて生ずる熱エネルギーを利用する熱電方式が多く用いられている。すなわち,放射線エネルギーを熱源とし,熱遮へい(蔽)によって高温部をつくり,ビスマス-テルル(Bi-Te),鉛-テルル(Pb-Te),(鉛-スズ)-テルル((Pb-Sn)-Te)などの熱電変換素子を高温部および低温部に置いたときに生ずる電位差を利用するもので,熱電対と同じ原理に基づく。このほか,半導体接合部分に放射線を照射して生ずる電子-正孔対を利用する方式のものも実用化されている。蛍光体を放射線照射によって発光させ,光伝導を利用する方法,放射線照射による二次電子放出(電子放出)を利用する方法なども研究されている。線源としては,プルトニウム238238Pu,ポロニウム210210Po,キュリウム244244Cmなどのα放射体と,ストロンチウム9090Sr,プロメチウム147147Pmなどのβ放射体が主として使用されている。原子電池は,軽量小型で寿命が長く,安定性にすぐれ,人工衛星の一部機器の電源,僻地(へきち)や無人島での観測機器や標識用の電源などとしてのほか,埋込み型の心臓ペースメーカー電源などにも利用されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原子力電池」の意味・わかりやすい解説

原子力電池
げんしりょくでんち

放射性同位元素から放出される放射線のエネルギーを電気エネルギーに変換する装置。アイソトープ電池ともいう。エネルギー変換にはいくつかの方式があるが、アイソトープを熱源として利用し、熱電素子などを用いて電気をおこす方法が主流である。プルトニウム238など長寿命のアイソトープを用いれば、長期間安定してエネルギーが供給されるため、交換が困難な場合の電源として利用される。かつては、体内に移植される心臓のペースメーカーの電源や、人工衛星・宇宙船用の各種電源としても広く用いられた。しかし、1964年アメリカの人工衛星SNAP-9Aが打上げに失敗して、原子力電池用のプルトニウム238約1キログラムが大気中にばらまかれるなどの事故もあり、現在では、十分な太陽光を得られる人工衛星では太陽電池を利用することが多い。また、心臓ペースメーカーでは、長寿命のリチウム電池の使用が一般的となっている。

[舘野 淳]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原子力電池」の意味・わかりやすい解説

原子力電池
げんしりょくでんち
atomic battery

放射性同位体の出す放射線のエネルギーを直接に電気エネルギーに変えるように工夫された電池。コバルト 60,イットリウム 90 (ストロンチウム 90の崩壊により生成される) ,プルトニウム 238などのような半減期の長いものが使われる。原理は,放射線が物質に吸収されるとき,もっているエネルギーが熱になることを利用,熱電変換素子で電気に変える。普通の電池に比べて性能が安定し,寿命が長いなどの利点があり,宇宙探査や海洋開発用の機器に使われている。アメリカの外惑星探査機ボイジャーの電源も原子力電池であり,最近では心臓疾患の人々のペースメーカーの電源としても使用されている。

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