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放射性同位体radioactive isotope(略称RI)から放出される放射線のエネルギーを電気エネルギーに変換するもので,原子電池,アイソトープ電池,RI電池,アイソトープ発電器などと呼ばれることもある。放射線エネルギーが物質に吸収されて生ずる熱エネルギーを利用する熱電方式が多く用いられている。すなわち,放射線エネルギーを熱源とし,熱遮へい(蔽)によって高温部をつくり,ビスマス-テルル(Bi-Te),鉛-テルル(Pb-Te),(鉛-スズ)-テルル((Pb-Sn)-Te)などの熱電変換素子を高温部および低温部に置いたときに生ずる電位差を利用するもので,熱電対と同じ原理に基づく。このほか,半導体接合部分に放射線を照射して生ずる電子-正孔対を利用する方式のものも実用化されている。蛍光体を放射線照射によって発光させ,光伝導を利用する方法,放射線照射による二次電子放出(電子放出)を利用する方法なども研究されている。線源としては,プルトニウム238238Pu,ポロニウム210210Po,キュリウム244244Cmなどのα放射体と,ストロンチウム9090Sr,プロメチウム147147Pmなどのβ放射体が主として使用されている。原子電池は,軽量小型で寿命が長く,安定性にすぐれ,人工衛星の一部機器の電源,僻地(へきち)や無人島での観測機器や標識用の電源などとしてのほか,埋込み型の心臓ペースメーカー電源などにも利用されている。
執筆者:石榑 顕吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
放射性同位元素から放出される放射線のエネルギーを電気エネルギーに変換する装置。アイソトープ電池ともいう。エネルギー変換にはいくつかの方式があるが、アイソトープを熱源として利用し、熱電素子などを用いて電気をおこす方法が主流である。プルトニウム238など長寿命のアイソトープを用いれば、長期間安定してエネルギーが供給されるため、交換が困難な場合の電源として利用される。かつては、体内に移植される心臓のペースメーカーの電源や、人工衛星・宇宙船用の各種電源としても広く用いられた。しかし、1964年アメリカの人工衛星SNAP-9Aが打上げに失敗して、原子力電池用のプルトニウム238約1キログラムが大気中にばらまかれるなどの事故もあり、現在では、十分な太陽光を得られる人工衛星では太陽電池を利用することが多い。また、心臓ペースメーカーでは、長寿命のリチウム電池の使用が一般的となっている。
[舘野 淳]
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