双曲型方程式(読み)そうきょくがたほうていしき(その他表記)hyperbolic equation

改訂新版 世界大百科事典 「双曲型方程式」の意味・わかりやすい解説

双曲型方程式 (そうきょくがたほうていしき)
hyperbolic equation

偏微分方程式の一つ。双曲型方程式の基本的な形は,

 ∂2u/∂t2c2u   ……(1) 

  (⊿=∂2/∂x12+……+∂2/∂xn2) 

と書かれる。ここでcは正の定数である。物理的には振動波動を記述する方程式であって,未知関数uutx)は点x=(x1,……,xn)の時刻tにおける変位を表す。通常,方程式(1)の解で初期条件

を満たすものを求めることが問題になる。これを双曲型偏微分方程式の初期値問題という。

 空間次元nが1(例えば弦の振動,または直線上を進む波)の場合は,方程式(1)は,

 ∂2u/∂t2c22u/∂x2  ……(1′) 

と書ける。φ(x),ψ(x)を2回微分可能な任意の関数とするとき,

 utx)=φ(xct)+ψ(xct)   ……(3) 

は(1′)の解である。(3)の右辺の第1項はx軸上を速度cで左方に進む波を表し,第2項は速度cで右方に進む波を表している。(1′)の解で初期条件(2)を満たすものは,

で与えられる。ただしfは2回微分可能な関数,gは1回微分可能な関数とする。これをストークスの波動公式という。

 三次元空間n=3)の場合の(1)の解で初期条件(2)を満たすものは次の式(4)で表される。まず点x=(x1x2x3)を中心とする半径rの球面Sxr上での関数f平均値Mxrf]と書く。すなわち,

このとき,初期値問題(1)-(2)の解utx)は,

と書ける。これをポアソンの波動公式という。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の双曲型方程式の言及

【偏微分方程式】より


[振動・波動の問題]
 振動,または波動の現象では,時刻tにおける点xの変位u(t,x)があまり大きくないときは,それが時間tとともに変化する状態は次の方程式で記述される。この形の方程式を双曲型方程式,または波動方程式という。 (4)においてfが変数tを含まない場合で,温度が平衡状態にあるとき,すなわちuが時間とともに変化しないときは,∂u/∂t=0であるから,(1/c)f(x)をあらためてf(x)と書けば,(4)は, Δu=-fとなる。…

※「双曲型方程式」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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