改訂新版 世界大百科事典 「古法華三尊仏」の意味・わかりやすい解説
古法華三尊仏 (ふるぼっけさんぞんぶつ)
兵庫県加西市西長の古法華山中で見いだされた奈良時代前期の石仏。別に遺存した石造屋蓋とともに奥壁として厨子を構成したもの。厨子はもと正面両開きの扉をつけ,その奥壁の板石に三尊像をきざんだ。屋蓋は古式な入母屋造,大棟の両端に鴟尾(しび)をたて,屋根の瓦棒,軒まわりの垂木型等ていねいに造り出している。三尊像は半肉彫,中尊は倚座し左右の脇侍は蓮華座に立ち,両獅子が頭上にその蓮華座を支え,前肢をあげて中尊前の香炉型にふれようとする。壁面上部,中央に大きい天蓋をおき,左右に三重塔をきざむ。火をうけて損傷がひどいが,なお精緻典雅な造形のあとをとどめる。かの唐長安の宝慶寺派の石仏に近似する。日本古代の石仏として類少ない秀作である。屋蓋高約50cm,石仏板石高102cm。凝灰岩材。重要文化財。
執筆者:高井 悌三郎
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