改訂新版 世界大百科事典 「周年栽培」の意味・わかりやすい解説
周年栽培 (しゅうねんさいばい)
野菜を周年供給するために種々の時期に栽培を行うこと。大部分の野菜では,栽培の時期が温度や日長条件によって制限されるので,出盛り期またはしゅん(旬)と呼ばれる短い期間に出荷が集中する傾向があった。しかしながら,年間を通して高い需要がある野菜では,出盛り期をはずれて入荷が少なくなると,生産物の価格は高騰する。そこで,この時期をねらって出荷する栽培法が開発され,今日では多くの野菜が1年を通して栽培されている。しかし周年栽培といっても,同一の野菜を同一の産地で周年出荷するのではなく,各産地は他産地に比べて有利な時期に栽培を行い,産地間の競合をさけて出荷している。キャベツの場合を例にとれば,春と秋には都市近郊の産地で,夏から初秋にかけては標高の高い冷涼地帯で,冬から春にかけては冬季温暖な地帯で露地栽培されたものが出荷されている。一方,トマトのように霜にあうと枯死してしまう種類では,冬から春にかけては冬季温暖な地帯や都市近郊の産地でハウスなどを利用して栽培されたものが出荷され,夏から秋にかけては耕地面積の広い露地栽培地帯から出荷されている。
執筆者:杉山 信男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報