路次とも書き,〈ろうじ〉とも発音する。おおいのない土地・地面のこと。また家と家との間の狭い道,敷地内に設けられた狭い通路,のことであるが,山梨県南巨摩郡,愛知県北設楽郡,飛驒の民家では屋内の土間,北陸,北信,奥羽地方の民家では庭,京都では町屋内の庭園,東北・北陸地方では庭園,大阪府,和歌山県,香川県の民家では裏木戸門,関西地方で路地の奥にある裏長屋を意味する。いっぽう茶道では茶室(座敷)に至る通路が,庭園として整備されたのちも露地と呼ばれる。
都市では,商工業の発達や,人口の増加・集中によって土地の利用価値が増すにつれて,街区内部の未利用地が活用されるようになり露地が発達した。中世の京都や奈良における辻子(ずし)の開発,近世における裏店(うらだな)の発生がそれをものがたるが,そうした裏借家群への通路として,また借家住人の生活空間としてつくられたのが露地である。京では路地とともに辻子の語が中世より引き続き用いられたが,江戸や大坂ではもっぱら路地といった。露地が表通りに貫通しているのを京・大坂では抜け露地,江戸では抜裏といった。江戸では抜裏が多く,京・大坂ではまれであった。江戸中期以降,裏長屋が増大したため,街区内部には網の目のように露地がつくられた。それは単なる通路ではなく,奥には共同井戸,共同流し,共同便所,塵芥箱などの施設が置かれ,洗濯場,物干場,炊事場,また子どもの遊び場など生活空間として多種多様の機能をになった。江戸では享保1年(1716)の町触(まちぶれ)によって露地口に番人を置くこと,露地口に木戸を設置する場合は,門を閉め切る前に明地や塵芥溜,雪隠(せつちん)などを調べることが命じられた。露地番は火の用心にもあたった。
執筆者:高橋 康夫
茶の湯の作法では庭から座敷に上がるのを正式としており,庭は露地(路地)と呼ばれる。室町末,武野紹鷗の時代には〈坪ノ内〉と称していたが,やがて〈路地〉の呼称が一般化する。そして,江戸中期ごろから,〈白露地〉という宗教的意味をこめた〈露地〉の文字がしだいに使われるようになった。庭園的な広がりをもつようになってもなお〈路地〉と称されるのは,露地が茶の湯の世界を日常的な世界から隔離する結界としての役割を負っていたことによるのであり,利休によると〈浮世ノ外ノ道〉と考えられていた。したがって露地はあくまで苑路を主体とする。露地口から躙口(にじりぐち)に向かって飛石,延べ段によって導かれ,途中には中潜りや中門(ちゆうもん)という潜りの形式が反復して用いられて,茶の湯の場の空間的個性が強調される。樹間には露地の景趣を高める装置として石灯籠が導入され,茶室の近くには〈心ノ塵〉を払う最も神聖な行事の備えとして蹲踞(つくばい)が据えられる。
→茶室
執筆者:日向 進
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路地とも書き、「ろうじ」とも発音する。家と家との間に挟まれた細長い道、あるいは屋根のない土地のことなどをいう。都市においては路地を開通させることにより街区内部の空閑地の高密度な利用が図られてきた。一方、茶の湯における庭も露地(路地)とよばれる。山上宗二(やまのうえのそうじ)が伝える初期の茶室古図(紹鴎(じょうおう)四畳半図)には「脇(わき)ノ坪ノ内」と「面坪(おもてつぼ)ノ内」がついていた。後者は室内への採光や通風、「中立(なかだち)」のために必要な庭であり、前者は茶室への通路であった。露地は、茶の湯の環境を「市中の山居」といわれるような別天地に形成するための結果としての役割を負っている。そのため、庭園的な広がりをもつようになっても苑路(えんろ)であることを主体とし、「道すがら」を意味する「路次」に発することばでよばれる。苑路の途中には潜りの形式の門が反復して設けられ、飛石(とびいし)や延段(のべだん)によって躙口(にじりぐち)まで導かれる。樹間には石灯籠(いしどうろう)が低く据えられ、茶室の近くには蹲踞(つくばい)が据えられる。
[日向 進]
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[茶道の実際]
茶道は,建築,造園,美術,工芸,宗教,思想,文学,料理,芸能などの文化の諸ジャンルにかかわっている。まず,茶会が行われる場は茶のための庭,すなわち露地と,茶のための建物である茶室から成り立っている。ことに茶室建築は古く数寄屋と呼ばれたように,日本近世住宅の様式である数寄屋造が形成されるうえに,重要な影響を与えたすぐれた建築である。…
※「露地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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