露地(読み)ロジ

デジタル大辞泉 「露地」の意味・読み・例文・類語

ろ‐じ〔‐ヂ|‐ぢ〕【露地/路地/露路】

(露地)屋根などがなく雨露がじかに当たる土地。「―栽培
路地露路)建物と建物との間の狭い道。
(路地・露路)門内や庭内の通路
(露地・路地)草庵式茶室に付属した庭。腰掛け石灯籠いしどうろう飛び石蹲踞つくばいなどを配し、多くは外露地内露地とに分けられる。茶庭
[補説]書名別項。→路地
[類語](1屋外場外野外戸外野天露天おもて室外青空窓外そうがいアウトドア/(2小道細道小径小路

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精選版 日本国語大辞典 「露地」の意味・読み・例文・類語

ろ‐じ‥ヂ【露地・露路・路地】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 露地 ) おおうものの何もないむきだしの土地。屋根などのない土地。地面。地上。
    1. [初出の実例]「樹木漸切掃、墳墓作露地」(出典:東南院文書‐三ノ四・天徳三年(959)一二月二六日・太政官牒)
    2. [その他の文献]〔法華経‐譬喩品〕
  3. 屋敷や寺などの庭内や門内の通路。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「ろじの戸をほとほとと叩く」(出典:仮名草子・竹斎(1621‐23)上)
  4. 町中の、家と家の間の狭い道。また、切見世などの細い通路。
    1. [初出の実例]「路地(ロヂ)〈略〉隣堺の蔵のわきは皆路地なり」(出典:俳諧・類船集(1676)呂)
  5. 茶室に付属する庭のこと。腰掛石灯籠、飛石、蹲踞(つくばい)などが配され、多くは、露地門によって内露地と外露地とに分けた二重露地になっている。露地庭。茶庭。
    1. [初出の実例]「路ぢに水打ちたる」(出典:仮名草子・犬枕(1606頃))
  6. ( 露地 ) 仏語。三界の火宅を離れ安らぎを得た境をたとえていう語。煩悩を離脱した境界。「法華経‐譬喩品」に説く燃えさかる家から逃れた長者の子どもたちが露地で大白牛車をもらうというたとえによる。
    1. [初出の実例]「三界の火宅を出でさせ給て、四衢道のなかの露地におはしまし」(出典:栄花物語(1028‐92頃)花山たづぬる中納言)
    2. [その他の文献]〔華厳五教章‐一〕
  7. 王土。国土。
    1. [初出の実例]「只偏奉朝家之安全、為露地之潤色也」(出典:東大寺続要録(1281‐1300頃)諸院篇)

ろう‐じ‥ヂ【露地・露路・路地】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ろじ(露地)」の変化した語 )
  2. 茶道で、茶室に付属する庭をいう。
    1. [初出の実例]「せはしない・ろうじ四ツ切り花三ツ」(出典:雑俳・笠付類題集(1834))
  3. 京都で、庭園のこと。〔男重宝記(元祿六年)(1693)〕
  4. 家と家の間の狭い通路。裏長屋などの狭い通路。また、その裏長屋。大阪でいう。
    1. [初出の実例]「露路(ロウヂ) ろぢ也」(出典:浪花聞書(1819頃))

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改訂新版 世界大百科事典 「露地」の意味・わかりやすい解説

露(路)地 (ろじ)

路次とも書き,〈ろうじ〉とも発音する。おおいのない土地・地面のこと。また家と家との間の狭い道,敷地内に設けられた狭い通路,のことであるが,山梨県南巨摩郡,愛知県北設楽郡,飛驒の民家では屋内の土間,北陸,北信,奥羽地方の民家では庭,京都では町屋内の庭園,東北・北陸地方では庭園,大阪府,和歌山県,香川県の民家では裏木戸門,関西地方で路地の奥にある裏長屋を意味する。いっぽう茶道では茶室(座敷)に至る通路が,庭園として整備されたのちも露地と呼ばれる。

都市では,商工業の発達や,人口の増加・集中によって土地の利用価値が増すにつれて,街区内部の未利用地が活用されるようになり露地が発達した。中世の京都や奈良における辻子(ずし)の開発,近世における裏店(うらだな)の発生がそれをものがたるが,そうした裏借家群への通路として,また借家住人の生活空間としてつくられたのが露地である。京では路地とともに辻子の語が中世より引き続き用いられたが,江戸や大坂ではもっぱら路地といった。露地が表通りに貫通しているのを京・大坂では抜け露地,江戸では抜裏といった。江戸では抜裏が多く,京・大坂ではまれであった。江戸中期以降,裏長屋が増大したため,街区内部には網の目のように露地がつくられた。それは単なる通路ではなく,奥には共同井戸,共同流し,共同便所,塵芥箱などの施設が置かれ,洗濯場,物干場,炊事場,また子どもの遊び場など生活空間として多種多様の機能をになった。江戸では享保1年(1716)の町触(まちぶれ)によって露地口に番人を置くこと,露地口に木戸を設置する場合は,門を閉め切る前に明地や塵芥溜,雪隠(せつちん)などを調べることが命じられた。露地番は火の用心にもあたった。
執筆者:

茶の湯の作法では庭から座敷に上がるのを正式としており,庭は露地(路地)と呼ばれる。室町末,武野紹鷗の時代には〈坪ノ内〉と称していたが,やがて〈路地〉の呼称が一般化する。そして,江戸中期ごろから,〈白露地〉という宗教的意味をこめた〈露地〉の文字がしだいに使われるようになった。庭園的な広がりをもつようになってもなお〈路地〉と称されるのは,露地が茶の湯の世界を日常的な世界から隔離する結界としての役割を負っていたことによるのであり,利休によると〈浮世ノ外ノ道〉と考えられていた。したがって露地はあくまで苑路を主体とする。露地口から躙口(にじりぐち)に向かって飛石,延べ段によって導かれ,途中には中潜りや中門(ちゆうもん)という潜りの形式が反復して用いられて,茶の湯の場の空間的個性が強調される。樹間には露地の景趣を高める装置として石灯籠が導入され,茶室の近くには〈心ノ塵〉を払う最も神聖な行事の備えとして蹲踞(つくばい)が据えられる。
茶室
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「露地」の意味・わかりやすい解説

露地
ろじ

路地とも書き、「ろうじ」とも発音する。家と家との間に挟まれた細長い道、あるいは屋根のない土地のことなどをいう。都市においては路地を開通させることにより街区内部の空閑地の高密度な利用が図られてきた。一方、茶の湯における庭も露地(路地)とよばれる。山上宗二(やまのうえのそうじ)が伝える初期の茶室古図(紹鴎(じょうおう)四畳半図)には「脇(わき)ノ坪ノ内」と「面坪(おもてつぼ)ノ内」がついていた。後者は室内への採光や通風、「中立(なかだち)」のために必要な庭であり、前者は茶室への通路であった。露地は、茶の湯の環境を「市中の山居」といわれるような別天地に形成するための結果としての役割を負っている。そのため、庭園的な広がりをもつようになっても苑路(えんろ)であることを主体とし、「道すがら」を意味する「路次」に発することばでよばれる。苑路の途中には潜りの形式の門が反復して設けられ、飛石(とびいし)や延段(のべだん)によって躙口(にじりぐち)まで導かれる。樹間には石灯籠(いしどうろう)が低く据えられ、茶室の近くには蹲踞(つくばい)が据えられる。

[日向 進]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「露地」の意味・わかりやすい解説

露地
ろじ

一般には屋根などのおおいのない地,地面,地上のこと。門内や庭先の道,家の間の狭い道。路地,露路,廬路とも書く。特に茶道では千利休が茶庭を露地と呼んだ。「三界の火宅を出で露地に坐す」の仏語からとった呼称。山寺や深山の自然を写す心持で,待合や腰掛,雪隠 (せっちん) ,蹲踞 (つくばい) ,飛び石などを設ける。内と外の別がある露地では中潜 (なかくぐり) を設け,樹木は花ものを避け常磐木を主とする。茶会のとき,主 (あるじ) の迎えで客が順に露地草履,露地下駄をはいて飛び石伝いに蹲踞に行き,手水を使い,茶室の上がり口に進むことを露地入りという。

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百科事典マイペディア 「露地」の意味・わかりやすい解説

露地【ろじ】

一般におおいのない地面,通路等をいうが,特に茶道で茶室に通ずる道および庭をさし,茶庭ともいう。飛石や蹲踞(つくばい),石組や植込みなどの配置は土地の広さと周囲の状況,設計者の好みなどにより種々に変化するが,千利休以来奥山の小道の深遠な情趣を表現するのが理想とされている。
→関連項目庭園

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「露地」の解説

ろじ【露地/露路】

➀屋根などのおおいがなく露出した地面。
➁建物と建物に挟まれた狭い通路。
➂茶室に付属して設ける庭。ふつう内露地と外露地からなり、飛び石つくばい・石灯籠などを配置する。◇「茶庭(ちゃてい/ちゃにわ)」ともいう。また、特に草庵茶室に付属するものをいうこともある。

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世界大百科事典(旧版)内の露地の言及

【茶道】より


[茶道の実際]
 茶道は,建築,造園,美術,工芸,宗教,思想,文学,料理,芸能などの文化の諸ジャンルにかかわっている。まず,茶会が行われる場は茶のための庭,すなわち露地と,茶のための建物である茶室から成り立っている。ことに茶室建築は古く数寄屋と呼ばれたように,日本近世住宅の様式である数寄屋造が形成されるうえに,重要な影響を与えたすぐれた建築である。…

※「露地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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