日本大百科全書(ニッポニカ) 「品花宝鑑」の意味・わかりやすい解説
品花宝鑑
ひんかほうかん
中国、清(しん)代の口語長編小説。全60回で、1849年の刊行と推定されている。作者陳森(ちんしん)は江蘇(こうそ)省常州の人で、少年時に北京(ペキン)に移り、何度か科挙に応じたが成功せず、家庭教師や秘書などをしながら、北京の劇場に足しげく出入りし、その見聞に基づいてこの小説をつくった。清代では官吏が妓楼(ぎろう)に遊ぶことが禁止されていたため、相公(シヤンコン)とよばれる若い俳優が官吏を相手に男色を売ったが、この小説はそういう変態的世界にふける乾隆(けんりゅう)期以来の名士たちをモデルにして、洗練された北京語基調の筆致で彼らの生態を詳細に活写した。旧来の長編小説の旧套(きゅうとう)を踏まず、各回をほぼ独立したストーリーの一編に完結させた構成はきわめて注目される。
[藤田祐賢]