中国、清(しん)末の長編小説。全64回。1892年出版。作者は韓邦慶(かんほうけい)(1856―94)。海上(上海(シャンハイ))の花(花柳(かりゅう)界)を描いたもので、趙撲斎(ちょうぼくさい)(作者の友人で、紅燈の巷(ちまた)におぼれ、落ちぶれて車夫になった実在の人物)を主人公に、相手の登場人物を交替させる連鎖式構成法をとる。花街の妓女(ぎじょ)も長三(高等妓女)、么二(ようじ)(中等)、花烟間(かえんかん)(下等)などすべてを描く。作者は「以過来人現身説法」(経験者が出てきてじかに教える)といい、色と金の世界を分析し、その描写は写実的・精細で洞察に富む。対話の部分は蘇州(そしゅう)語(当時、上海花柳界の通用語)で、そのため真に生きた人間を描くことに成功し、花柳小説に特異な境地を開いた。
[志村良治]
『太田辰夫訳『中国古典文学大系49 海上花列伝』(1969・平凡社)』
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… 蘇州語においては,方言を表記する独特な文字が早くから定着していたので,方言文学を生んでいる。明・清以降,蘇州方言を用いた作品は戯曲,小説,弾詞本など数多くあるが,なかでも小説《海上花列伝》(韓邦慶作,1894。太田辰夫訳,1969)は最も有名で,対話の部分がすべて純粋な蘇州語で書かれている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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