双翅(そうし)類昆虫の幼虫期における唾液腺の細胞核中にみられる巨大な染色体をいう。唾腺染色体、巨大染色体ともいう。一般に双翅類昆虫の唾液腺細胞は通常の細胞分裂をせずに核内分裂のみ行って巨大化する。すなわち、この細胞は休止核の状態で染色体が核内分裂を繰り返し、長大な染色体となる。個々の染色体はファイバー状になり、染色粒(クロモメアー)が同一場所に横に連なって存在するので、その部分がバンド模様に現れる。ショウジョウバエを用いた遺伝の交配実験から唾液腺染色体のバンド模様と遺伝子の関係が明らかにされ、唾液腺染色体地図が作成されている。核の中では相同染色体が2本ずつ対(つい)になってくっついているので唾液腺染色体は体細胞の染色体数の半分しかみられない。たとえば、キイロショウジョウバエでは4本(2n=8)、メスアカケバエは5本(2n=10)、カは3本(2n=6)などである。
[吉田俊秀]
…唾液腺染色体ともいう。双翅(そうし)目の昆虫(幼虫)の唾腺細胞の中間期の核にみられる巨大染色体。…
※「唾液腺染色体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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