啓蒙の弁証法(読み)けいもうのべんしょうほう(英語表記)Dialektik der Aufklärung

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「啓蒙の弁証法」の意味・わかりやすい解説

啓蒙の弁証法
けいもうのべんしょうほう
Dialektik der Aufklärung

フランクフルト学派の M.ホルクハイマーと T.アドルノ共著。 1948年刊。基本的なモチーフは,野蛮からの解放を約束したはずの啓蒙理念が次第に道具化し,人間や物は操作,管理,支配の材料でしかなくなると同時に近代理性自体も道具化していつしか再び野蛮へと退落していくプロセス解明にある。啓蒙の自己展開は自然支配に必然的に支えられているが,それは外なる自然の支配のみならず人間の内なる自然の支配にまで拡大される。しかし著者たちは理性の自己崩壊を見すえつつも,そこに理性の自己批判能力の可能性を回復しようと試みる。そこでは個や特殊性を救済する「限定された否定」や自然との宥和を志向する「ミメーシス」などの概念が暗示的に提起されている。

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