フランクフルト学派(読み)フランクフルトガクハ(その他表記)Frankfurterschule ドイツ語

デジタル大辞泉 「フランクフルト学派」の意味・読み・例文・類語

フランクフルト‐がくは【フランクフルト学派】

1930年代以降、フランクフルトの社会研究所に参加した一群の思想家たち。マルクス主義・精神分析学・アメリカ社会学などの影響のもと批判理論を展開、現代社会の総体的解明をめざした。ホルクハイマーを中心に、アドルノフロムマルクーゼベンヤミンノイマンらがおり、第二次大戦後はハーバーマスシュミットらが活躍している。

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精選版 日本国語大辞典 「フランクフルト学派」の意味・読み・例文・類語

フランクフルト‐がくは【フランクフルト学派】

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Frankfurter Schule の訳語 ) 一九三〇年代以降に、フランクフルトの「社会研究所」を舞台として活躍した哲学者たちのグループ。ホルクハイマー、アドルノ、マルクーゼ、フロムらや、第二次世界大戦後のハーバーマス、シュミットらを含む。独自のマルクス主義的性格を帯びた近代文明批判を特色とし、その業績は多方面に及んでいる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フランクフルト学派」の意味・わかりやすい解説

フランクフルト学派
ふらんくふるとがくは
Frankfurterschule ドイツ語

広義には、1920年代以来ドイツのマルクス主義的学術研究の拠点であったフランクフルトの社会研究所に拠(よ)った人々の総称であるが、狭義には、30年代以降ホルクハイマーの指導下に同研究所に集まったポロック、アドルノ、ベンヤミン、マルクーゼ、フロム、F・L・ノイマンたち一群の思想家に、第二次世界大戦後の彼らの弟子にあたるハバーマス、シュミットAlfred Schmidt(1931― )ら若手研究者の一団を加えた総称である。彼らは正統派マルクス主義教条主義に反対しつつも、なんらかの意味でマルクスの批判的動機を受け継ぎ、それをフロイトの精神分析学やアメリカ社会学の経験的方法と結び付けて、現代の経験を踏まえた「社会の批判的理論」を展開した。30年代から40年代にかけての亡命中は、機関誌『社会研究紀要』によってファシズムへの思想的抵抗を貫き、また、『権威と家族』(1938)、『権威主義的性格』(1950)などの優れた共同研究を生み出すとともに、西欧文明への根本的な省察(たとえば『啓蒙(けいもう)の弁証法』1947)を行い、戦後は管理社会や大衆文化、学界における実証主義的傾向などに鋭い批判を加えた。

 その特色は、実証主義へ反対しつつ、社会批判と理性批判を統合する「社会の批判的理論」を旗印として、独自のユダヤ的ユートピア意識と、否定性を強調する弁証法解釈に基づき、フロイトをはじめとする新しい実証科学の成果を批判的に継承しつつ、哲学、科学、芸術など近代文明の全般にラディカルな批判を展開したところにある。前記の著作のほか、アドルノの『否定的弁証法』(1966)、フロムの『自由からの逃走』(1941)、ノイマンの『ビヒモス』(1942)、マルクーゼの『エロスと文明』(1955)、『一次元的人間』(1964)、ベンヤミンの『歴史哲学テーゼ』(1939)、ハバーマスの『理論と実践』(1963)、『認識と関心』(1968)、シュミットの『マルクスと自然概念』(1962)などは、その多彩な業績の一端である。

[徳永 恂]

『徳永恂著『現代批判の哲学』(1979・東京大学出版会)』『A・シュミット著、生松敬三訳『フランクフルト学派』(1975・青土社)』『M・ジェイ著、荒川幾男訳『弁証法的想像力』(1975・みすず書房)』『清水多吉著『1930年代の光と影』(1977・河出書房新社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「フランクフルト学派」の意味・わかりやすい解説

フランクフルト学派 (フランクフルトがくは)
Frankfurter Schule

1930年代以降,ドイツのフランクフルトの社会研究所,その機関誌《社会研究Zeitschrift für Sozialforschung》によって活躍した一群の思想家たちの総称。M.ホルクハイマー,T.W.アドルノ,W.ベンヤミン,H.マルクーゼ,のちに袂(たもと)を分かったE.フロム,ノイマンFranz Leopold Neumann(1900-54)たちと,戦後再建された同研究所から輩出したJ.ハーバーマス,シュミットAlfred Schmidt(1931- )らの若い世代が含まれる。彼らはいわゆる〈西欧的マルクス主義〉の影響の下に,正統派の教条主義に反対しつつ,批判的左翼の立場に立って,マルクスをS.フロイトやアメリカ社会学等と結合させ,現代の経験に即した独自の〈批判理論〉を展開した。彼らはユダヤ系左翼のゆえをもってナチス時代にはアメリカに亡命を余儀なくされたが,その間,機関誌《社会研究》によって理論的抵抗を続け,共同研究《権威と家族》(1936)をはじめ,ホルクハイマー,アドルノの共著《啓蒙の弁証法》(1947),ノイマンの《ビヒモス》(1942),マルクーゼの《理性と革命》(1941),フロムの《自由からの逃走》(1941)等,戦後に有名となった多くの業績を発表している。しかしフランクフルト学派という名称が生まれ,広く脚光を浴びるようになったのは50年代以降,ホルクハイマーとアドルノが帰国して研究所を再建してからである。とくにアドルノの各方面にわたる多彩な批評活動,60年代の学生反乱の時期でのマルクーゼの言動,学会でのハーバーマスの理論活動によって,国際的に評価を得たといえよう。彼らはそれぞれ独自の個性をもっているが,共通しているのは左右を問わない既成の権威への反発であり,管理された文化や社会,実証主義的な科学や哲学,硬直化した芸術への仮借ない批判活動である。そして,その底を流れている強い否定の精神,その行方に予感されている〈文明と自然との宥和〉というユートピアのビジョンであろう。
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百科事典マイペディア 「フランクフルト学派」の意味・わかりやすい解説

フランクフルト学派【フランクフルトがくは】

1923年に設立されたドイツのフランクフルト大学〈社会研究所〉,またその機関誌《社会研究》によって活躍した研究者,思想家の総称。Frankfurter Schuleと呼ぶ。いわゆる第1世代には,ホルクハイマーをはじめ,アドルノベンヤミンマルクーゼフロム,ノイマンらがいる。マルクス主義の立場に親近しつつ,正統派の教条主義に反対し,ヘーゲル弁証法の復権,フロイト理論やアメリカ社会学との結合などによって,独自の〈批判理論〉を展開し,大衆社会に内在する諸問題を鋭く提起した。ナチスの台頭により1933年に追放されるが,亡命先の米国で,ファシズムの成立をゆるした社会心理的基盤の分析など多くの業績を残している。1954年に米国から帰ったホルクハイマーとアドルノによって同研究所は再建され,ハーバーマス,オッフェら第2世代の活躍もあり,国際的に注目を浴びている。
→関連項目フランクフルト・アム・マインレヴィン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フランクフルト学派」の意味・わかりやすい解説

フランクフルト学派
フランクフルトがくは
Frankfurter schule

フランクフルト大学および同大学社会研究所 (1923設立) に所属する T.アドルノ,M.ホルクハイマー,M.マルクーゼ,J.ハバーマスらを中心メンバーとした一学派。彼ら相互の交流を通じて形成された「拒絶の精神」と名づけられる精神的基盤を特徴としている。「拒絶の精神」とは,現代の人間生活のあらゆる側面に支配の糸が投げかけられている管理社会の既成体制に対して,その根底からの革新を要求する精神のことである。メンバーの大部分がユダヤ系であり,また概して批判的観点を強く押出しつつもマルクス主義と深くかかわっていたため,ヒトラーの政権掌握後その多くはアメリカに亡命し,第2次世界大戦後かなりの部分がフランクフルトへ戻った。この通称フランクフルト学派は,戦前にもある程度の影響力をもっていたが,1960年代末から非常な注目を集めて今日にいたっている。哲学や社会思想面での活動が中心であったが,経済学や社会科学面にも関心を示した K.ウィットフォーゲルや H.グロスマンらも含まれている。

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世界大百科事典(旧版)内のフランクフルト学派の言及

【精神分析】より

…それは,社会・文化事象の理解に心理学的視点を導入するさまざまな試みを促進し,大衆社会論,大衆文化批判などを生みつつ,社会科学を革新するうえで大きな役割を果たした。 第3は,M.ホルクハイマー,T.アドルノ,H.マルクーゼら,のちにフランクフルト学派とよばれる人々によるフロイト主義の批判的摂取である。彼らは20年代のワイマール・ドイツで,フランクフルトの社会研究所に拠って,マルクス主義に基づく独自な批判的理論を形成したが,精神分析に深い関心を抱いていた。…

※「フランクフルト学派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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