アドルノ(読み)あどるの(英語表記)Theodor Wiesengrund Adorno

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アドルノ」の意味・わかりやすい解説

アドルノ
あどるの
Theodor Wiesengrund Adorno
(1904―1969)

ドイツの代表的思想家。初めフランクフルト大学で哲学を修める一方、アルバン・ベルクに就いて作曲を学び、ウィーンで音楽雑誌の編集に携わったが、1931年『キルケゴール論』で教授資格を得、同大学で哲学を講ずるかたわら、社会研究所のメンバーとなる。ナチスの政権獲得後アメリカへ亡命したが、戦後いち早く西ドイツへ帰国、以後ホルクハイマーの後を受けて、フランクフルト学派の指導的存在として脚光を浴びる。彼の思想の特色は、既成観念枠組みにとらわれない自由な精神と、哲学や芸術などもっとも内面的な問題をも仮借ない社会批判にさらす批判的精神と、それを的確に言い表す精緻(せいち)なレトリックにある。「自然と文明との融和」というユートピアに基づく、近代文明と現代管理社会への根本的批判がその主題であった。『啓蒙(けいもう)の弁証法』(1947)、『新音楽の哲学』(1949)、『権威主義的性格』(1950)、『否定弁証法』(1967)など著書多数。

徳永 恂]

『田中義久・矢沢修次郎訳『権威主義的パーソナリティ』(1980・青木書店)』『木田元・徳永恂・渡辺祐邦・三島憲一・須田朗・宮武昭訳『否定弁証法』(1996・作品社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アドルノ」の意味・わかりやすい解説

アドルノ
Adorno, Theodor Wiesengrund

[生]1903.9.11. フランクフルト
[没]1969.8.6. フィスプ
ドイツの哲学者,美学者,社会学者。フランクフルト大学に学んだ。初めウィーンで音楽の仕事にたずさわったが,1931年母校の哲学講師となった。しかしナチスに追われ,アメリカに亡命,ファシズム研究を主題とした『権威主義的パーソナリティ』 Authoritarian Personality (1950) を著わした。 49年ドイツに帰り,M.ホルクハイマーとともに社会調査研究所を開設,50年フランクフルト大学教授に就任。彼の思想は体系性を拒否して,各イデオロギー領域にひそんでいる精神の物化的傾向を鋭く析出するところに特色があり,近代文明の批判として独自のものを提示している。主著『現代音楽の哲学』 Die Philosophie der neuen Musik (49) ,『社会学』 Soziologica (62) ,『否定的弁証法』 Negative Dialektik (66) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報