改訂新版 世界大百科事典 「善光寺式阿弥陀三尊」の意味・わかりやすい解説
善光寺式阿弥陀三尊 (ぜんこうじしきあみださんぞん)
長野県善光寺の本尊阿弥陀三尊像を模刻し勧請したと伝える像。その原像(善光寺如来)は古来まったくの秘仏で他見を許さないため,各地にのこるこの形式の仏像がどの程度原像に忠実であるか明言できない。寺伝によれば,原像は欽明天皇13年に百済聖明王より貢献された像で,悪疫流行により難波の堀池に捨てられ,それを本田善光が拾って自宅に安置し,後に一寺を建てたのがそのはじまりという。伝模の像はだいたい,中尊は通肩に衣をまとい蓮台に直立し,右手は胸前で五指を開いて立てて掌を見せる。左手は垂下して第2,3指を伸ばし,他は捻じて刀印のようにする。両脇侍は化仏と宝瓶とを表示した宝冠をそれぞれ戴き,両手は胸前で上下に掌を重ね合わせ,梵篋(ぼんきよう)印をみせる。三尊足下の蓮台は臼形蓮台とよばれ,蓮肉部の高い垂敷蓮華である。光背は大きな舟形光背で,光中に七化仏があり,1光背中に三尊が納まるところから一光三尊と称する。この形式の像は鎌倉時代から流行し,全国に200余体を数える。また寺号に〈善光寺〉〈新善光寺〉を名乗るものも多い。遺品の多くは銅造であるが,広島県安国寺の像のごとく木造のものがあり,また埼玉県福徳寺の像のごとく鉄造の例もある。善光寺式阿弥陀の流行は清凉寺式釈迦の流行と軌を一にするところがあり,その盛行のさまは遺品により十分に察せられる。
執筆者:光森 正士
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報