清凉寺式釈迦(読み)せいりょうじしきしゃか

改訂新版 世界大百科事典 「清凉寺式釈迦」の意味・わかりやすい解説

清凉寺式釈迦 (せいりょうじしきしゃか)

京都嵯峨清凉寺本尊木造釈迦如来立像を模刻した像をいう。原像である清凉寺の本尊は,983年(永観1)に日本を発ち985年(寛和1・北宋雍煕2)宋の台州開元寺におもむいた僧奝然ちようねん)が同寺にあるインド伝来の釈迦如来立像の模刻を志し,張延皎,張延襲の兄弟に依頼して,7月21日から8月18日までという実に短日で完成をみた釈迦如来像である。三国伝来の釈迦,あるいは栴檀せんだん)瑞像の釈迦と称される。像高160cmの等身像で,光背,台座を具備する。像内から多くの納入品が発見され,造立の経緯,結縁喜捨した人々など詳細が判明し,また特に絹製の五臓六腑が納められていたことは医学史の上からも注目され,かつ本像が生身の釈迦として造立されたことが知られる。像容では渦巻形の頭髪,通肩にまとう着衣法とその衣文の表現,右手をあげ左下を垂下し,五指を伸ばし掌を見せる施無畏(せむい),与願の印相など種々の特徴が認められ,模刻像はこれらの特徴をすべて踏襲している。模刻の流行は鎌倉時代からで,畿内を中心に大きな広がりをもつ。だが原像を直接模刻したと確認されるのは奈良西大寺の本尊のみで,戒律復興に尽力した叡尊願主となって,仏師善慶により1249年(建長1)に造られた。原像は中国産の桜材であるが,日本の模刻像はヒノキ材を用いて,しかも表面は檀像風に素木仕上げとし,円形花文や衣文の稜線などに切金(きりかね)を押すのが特徴で,これも原像の作風に倣うところである。
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百科事典マイペディア 「清凉寺式釈迦」の意味・わかりやすい解説

清凉寺式釈迦【せいりょうじしきしゃか】

清凉寺の釈迦如来像の形式を模した仏像。原像は,入宋した【ちょう】然(ちょうねん)が浙江省台州開元寺のインド伝来と伝える釈迦像を現地で模刻させ,987年日本に持ち帰ったもの。インドにおける根本の像,三国伝来の像として盛んに信仰され,鎌倉時代には多くの模像を生んだ。像の特色はガンダーラ式の著しい平行衣文。現存作例は西大寺や唐招提寺の釈迦如来立像など。

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