四畳半襖の下張事件(読み)よじょうはんふすまのしたばりじけん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「四畳半襖の下張事件」の意味・わかりやすい解説

四畳半襖の下張事件
よじょうはんふすまのしたばりじけん

『四畳半襖の下張』という短編小説を掲載した雑誌『面白半分』の編集長である作家と雑誌社の社長が猥褻文書販売罪 (刑法 175条) に問われ有罪となった事件。『四畳半襖の下張』は永井荷風の作と伝えられ擬古文文語体で書かれており,かつて待合であった売家を買取った作家が,四畳半の襖の下張りに用いられた紙ほごに男女の性行為を書き連ねたものを見つけるという内容で,全体の3分の2が性的交渉の描写であった。最高裁は猥褻性の判断にあたり,当該文書の性に関する描写の程度と手法,性的描写の文書全体に占める比重,文書に表現された思想などと性的描写との関連性,文書の構成や展開,芸術性や思想性による性的刺激の緩和の程度などの諸点から当該文書を全体としてみたときに,主として読者の好色的興味に訴えるものと認められるかどうかを基準とすべきとした (最高裁判決 1980年 11月 28日) 。これは,猥褻性と芸術性とは次元の異なる問題としたチャタレー事件判決とは異なり,猥褻性の判断にあたって芸術性や思想性を一定程度考慮することを認め,処罰を制限する方向性を示したものである。

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