内科学 第10版 「四肢痛」の解説
四肢痛(症候学)
四肢痛の原因として,骨・骨膜・筋肉・筋膜・腱・腱鞘など四肢を構成する組織に生じる局所性疼痛,脊髄・神経根・末梢神経の障害による神経因性疼痛,血液あるいはリンパ液の循環障害による循環障害性疼痛などがあげられる.
病態生理
1)侵害受容性疼痛: 外傷,炎症,腫瘍などによって,局所の侵害受容器が物理的もしくは化学的に刺激されて生じる疼痛である.代表的な疾患として,四肢の骨折,腱鞘炎,骨腫瘍,軟部腫瘍などがある.2)神経因性疼痛: 脊髄,神経根および末梢神経への外傷,圧迫,炎症,腫瘍,代謝性疾患に伴う変性などにより生じる疼痛である.代表的な疾患として,頸椎症性神経根症,腰椎椎間板ヘルニア,絞扼性神経障害(手根管症候群など),帯状疱疹後神経痛,幻肢痛などがある.3)循環障害性疼痛: 四肢の動脈硬化などにより末梢組織の血流が低下し,低酸素状態となりその代謝産物により疼痛が生じる.代表的疾患として閉塞性動脈硬化症,Burger病(血栓性閉塞性動脈炎),Raynaud病などがある.
鑑別診断
侵害受容性疼痛のように障害部位と疼痛部位の多くが一致する場合と,神経因性疼痛や循環障害性疼痛のように一致しない場合があるため,四肢痛であっても常に全身的診察が大切である.四肢痛をきたすおもな鑑別疾患を図2-43-1にまとめた.[辻 崇・戸山芳昭]
■文献
戸山芳昭ら:整形外科学.外傷学,第7版,文光堂,東京,2005.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報