日本歴史地名大系 「因幡志」の解説
因幡志
いなばし
四七巻三九冊
異記 稲羽志・因幡誌 安陪恭庵編著
成立 寛政七年
写本 鳥取県立図書館(旧西橋蔵書本)ほか
解説 安陪恭庵は享保一九年に生れ、医業に従う傍ら魚声閣李山と号して俳諧にも親しみ、文化五年七五歳で没している。早くから「因幡民談記」の増補を志し、資料の収集と実地踏査に努めて、このために家産が傾いたといわれる。「因幡民談記」との相違は郡郷の部を中心としている点であり、同時代の村の戸数・産物・交通などを詳記している点に特色がある。西橋蔵書本の総目と巻数は首巻二巻・巨濃郡二巻・法美郡二巻・八上郡一巻・八東郡二巻・智頭郡二巻・邑美郡二巻・高草郡二巻・気多郡二巻・神社之部二巻・神社之図絵三巻・仏閣之部一巻・名所之部一巻・勝地之図絵二巻・国守之部二巻・古城之部二巻・古墳之部三巻・武器図式二巻・雑物図絵二巻・筆記之部七巻・歴世考三巻である。首巻に明治一九年編者安陪子の元本を借りて写したと記す。また元本目録中には第二〇歴世考二〇巻とあるが、村上天皇までの三冊しかなく、編集に至らずして没したのではないかと推定している。岡島正義は恭庵の努力を高く評価しつつその考証が十分でないことを批判して、「臆度私見の説少なからず」と評している。
活字本 因伯叢書三
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報