国家資産基金(読み)こっかしさんききん(その他表記)Sovereign Wealth Fund

知恵蔵 「国家資産基金」の解説

国家資産基金

外貨準備など国の資産を、投資収益に注目して運用することを目的に設立された政府系ファンド総称。世界全体では数兆ドルの規模になっていると見られる。 SWFには、UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビ首長国が石油収入で運用しているADIA、ノルウェーが石油収入で運用しているガバメント・ペンション・ファンド・グローバル(政府年金基金)、シンガポールの外貨準備の運用を目的としたGIC、ロシアの安定化基金などがある。 中東やノルウェーなどの産油国では早くからあったが、外貨準備で世界一になった中国が2007年に中国投資有限責任公司の設立を決め、同年5月には米国のプライベート・エクイティ・ファンド最大手のブラックストーンに30億ドルを投資することを明らかにしたことで、注目を集めるようになった。その後、サブプライムローン損失を受けた米シティグループにADIAが75億ドル、スイスUBSにGICが100億ドル、米モルガン・スタンレーに中国投資有限責任公司が50億ドルの出資を決めた。 これまで各国の外貨準備は、主に米国の短期国債で運用されてきたが、石油価格の高騰恩恵を受けた産油国や、中国などの一部の発展途上国は、蓄積した外貨準備を、SWFを通じて、米国の国債以外の証券や、ユーロなどドル以外の資産に投資しているものと見られる。 各国のドルによる外貨準備は、ドルが基軸通貨である条件の1つに数えられてきたが、SWFの動きは、外貨準備でのドル離れを示すことになった。中国に次ぐ外貨準備を持つ日本は、SWFを作れば、ドル安を加速するなどとして、設立には消極的だ。

(高成田享 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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