日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際テレビジョン伝送」の意味・わかりやすい解説
国際テレビジョン伝送
こくさいてれびじょんでんそう
international television transmission
日本と外国との間で、放送事業者が放送素材として使用する高品質の映像を伝送すること。日本ではKDDIなどの通信事業者が映像伝送サービスとして提供している。国際間のニュースやできごとを、赤道上空約3万6000キロメートルの静止衛星軌道に打ち上げられたインテルサットなどの通信衛星を使って行うテレビジョン衛星中継がその典型。静止衛星軌道にある一つの衛星から発射される電波は、地球表面のほぼ3分の1をカバーするため、同じ地域内にある多数の地球局が同一電波を同時に受信し、また送信することができる。使われている電波はマイクロ波(極超短波)で周波数帯域幅は約500メガヘルツという広さであり、大容量の通信回線が設定でき、通信品質はきわめて優れたものである。
日米間で行われた初めての国際テレビジョン伝送の実験は、1963年(昭和38)にアメリカの通信衛星リレー1号を使用して行われた。そのとき、最初にアメリカから日本に送られてきたのが、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺のニュースであった。1966年にはインテルサット衛星が太平洋上に打ち上げられ、これを使用してKDD(現KDDI)が日米間で国際テレビジョン伝送サービスを開始した。
高品質の映像を伝送するためには広帯域の通信回線を必要とするため、当初は通信衛星のみが使用されたが、その後、海底ケーブル容量の飛躍的増大や映像信号の圧縮技術の発達により、海底ケーブルによる伝送も行われるようになり、1996年(平成8)7月、KDDは第5太平洋横断ケーブルネットワーク(TPC-5CN)による映像伝送サービスを開始した。
国際テレビジョン伝送の利用者は各放送事業者(NHKや民放テレビ各社など)が中心で、外国にある映像素材を外国の放送事業者から買い取り、それを日本に運ぶために、KDDIなどの通信事業者に依頼する。通信事業者は利用者からの伝送の申込みを受け付けると、外国の通信事業者や衛星を管理している事業者等との間で調整を行い、映像回線の設定を行う。
外国からのテレビジョン伝送を受信する場合に問題になるのは、国によって走査線数やカラー方式が異なることである。したがって、方式の異なる国からテレビジョン伝送を受信する場合は、方式変換が必要である。そのため、通信事業者の局内にテレビジョン標準方式変換装置が設置されており、必要のつど使用されている。
こうした国際テレビジョン伝送は、日々、放送されるテレビ番組で用いられているほか、オリンピックなどの国際的なイベント中継にも用いられる。
[高橋陽一]