土芳(とほう)(読み)とほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「土芳(とほう)」の意味・わかりやすい解説

土芳(とほう)
とほう
(1657―1730)

江戸前期の俳人。服部(はっとり)氏。通称半左衛門。名は保英(やすひで)。初号蘆馬(ろば)。伊賀上野の人。藤堂藩藩士。木津孫次良保向(やすむき)の五男で、服部家の養子となる。松尾芭蕉(ばしょう)の感化により、1685年(貞享2)ごろ致仕し、以後は蓑虫庵(みのむしあん)にこもって俳諧(はいかい)に専念し、生涯を独身で過ごした。伊賀における蕉門の中心人物として多くの人々を統率し、とりわけ91年(元禄4)の『猿蓑(さるみの)』刊行に際しては、29名もの多数の伊賀俳人の作を入集(にっしゅう)せしめた。土芳の最大の功績は芭蕉の聞書(ききがき)『三冊子(さんぞうし)』を書き残したことで、ここには芭蕉の俳論が整然と記されている。ほかに芭蕉の『蕉翁(しょうおう)句集』『蕉翁文集』『奥の細道』の三部作の完成も重要なものである。編著『庵日記(いおにっき)』『横日記』など。

[雲英末雄]

 おもしろう松笠(まつかさ)もえよ薄月夜

『富山奏著『伊賀蕉門の研究と資料』(1970・風間書房)』


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