改訂新版 世界大百科事典 「塩化ルテニウム」の意味・わかりやすい解説
塩化ルテニウム (えんかルテニウム)
ruthenium chloride
通常はルテニウム(Ⅲ)塩のことをいう。
塩化ルテニウム(Ⅲ)
化学式RuCl3。無水和物にα型とβ型が知られ,水和物に1水和物と3水和物が知られている。市販のものは3水和物RuCl3・3H2Oに近い組成を示す。β型は暗褐色の毛状粉末で,エチルアルコールに溶ける。塩素中450℃でα型に変化する。α型は黒色葉状の結晶で,水,エチルアルコールに溶けない。1水和物は黒褐色板状の結晶で水に溶ける。3水和物は実際にはトリクロロトリアクアルテニウム(Ⅲ)[RuCl3(H2O)3]という正八面体錯体であり,mer形とfac形の幾何異性体が存在する(図参照)。どちらも橙色,吸湿性の結晶で,吸収スペクトルから区別される。
ルテニウムをCl2-CO混合気体中で加熱するとβ型が得られ,これを塩素中で加熱するとα型に変化する。3水和物の異性体は錯塩K2[RuCl5(H2O)]の塩酸酸性溶液からイオン交換クロマトグラフィーで得られる。
執筆者:柴田 村治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報