改訂新版 世界大百科事典 「外傷神経症」の意味・わかりやすい解説
外傷神経症 (がいしょうしんけいしょう)
traumatic neurosis
外傷を契機として生ずる心因性の神経症状態の総称。災害神経症もほぼこれと同じものであり,賠償要求や補償問題,年金などが発症に関係する場合(補償金や年金を多く獲得したいという願望が動機となって発症する)には,賠償神経症または年金神経症という呼称も用いられる。不安症状,抑うつ症状,心気症状あるいは種々の身体的愁訴を示したり,ときにはヒステリー症状がみられたりする。ただし,頭部外傷後に現れる神経症状態の中には微細な脳損傷の存在が疑われることもあり,単に心理的な原因によってのみ生じたものと判断しがたい例も少なくない。なお事故や被害による過酷なストレスが原因で,急性または慢性に生ずる恐怖,回避といった精神障害を,外傷後ストレス障害(PTSD)と呼んでいる。
→神経症 →ストレス
執筆者:武正 建一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報