PTSD(読み)ピーティーエスディー(その他表記)Post Traumatic Stress Disorder

デジタル大辞泉 「PTSD」の意味・読み・例文・類語

ピー‐ティー‐エス‐ディー【PTSD】[posttraumatic stress disorder]

posttraumatic stress disorder》心的外傷後ストレス障害忍耐限界を超えたストレス、たとえば、戦争災害地震など)・テロ事故・犯罪事件などを体験した後に生じる心身障害のこと。不安・うつ状態パニックフラッシュバックなどが代表的な症状。日本では、平成7年(1995)の阪神・淡路大震災後に問題になった。

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共同通信ニュース用語解説 「PTSD」の解説

PTSD

心的外傷後ストレス障害(PTSD) 事件や事故、災害など、生命の危険や強い恐怖を感じるような体験をきっかけに引き起こされる精神的な障害。記憶が突然よみがえるフラッシュバックや不眠抑うつ、パニック、過剰な警戒感などの症状が出る。体験から数年後に発症する場合もあり、性暴力被害も引き金になる。日本では阪神大震災地下鉄サリン事件を機に注目されるようになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「PTSD」の意味・わかりやすい解説

PTSD
ぴーてぃーえすでぃー
Post Traumatic Stress Disorder

心的外傷後のストレス障害。1995年(平成7)の阪神・淡路大震災後、被災者に多数みられた。思いがけないときに不安が増大し、不眠が続き、ささいなことで反応を示す。DSM-Ⅳ(アメリカ精神医学会で定義している精神疾患分類と診断の基準)では、「外傷後ストレス障害」とされ、死を身近に感じるほどの危険や恐怖あるいは無力感に出会い、こうした苦しいできごとの記憶を反復して再体験(想起)したり、夢にみたりするほか、集中困難な状態になったり落ち着きがなくなったりするものをいうとされてきた。フラッシュバック症状もみられるとしている。症状の持続状態が3か月以内のものを急性PTSDといい、3か月以上持続するものを慢性PTSDといっている。これに対して急性ストレス障害ASD)は、同様な危機的状況を体験したあと2、3日から最長4週間以内に発症・持続するものをいい、周囲に対する注意の減弱や現実喪失感のほか、離人感(自分が自分ではないように感じるなどの状態)も起こるとされている。

 災害直後はもとより、半年を経てなお精神変調が続くものも多いので、精神医学や心理学の専門家だけでなく、看護師や保健師、ケースワーカーなどがチームを組んで治療が行われることが望ましい。子供の場合は学校や保育園、幼稚園の教師や保育士などが治療を担当するが、症状は千差万別でマニュアルどおりの対応は不可である。

 近年では事件・事故が起こるたびに、ASDを含むPTSDの発症が憂慮され、メンタルケアの重要性が指摘されている。症状の個々に対応するケアではなく、その人の全存在にかかわる問題に直面しているという理解に基づいてケアにあたる必要がある。阪神・淡路大震災を始め、1998年の和歌山ヒ素中毒事件、2001年の大阪府池田小学校事件、04年新潟県中越地震、07年能登半島地震、07年新潟中越沖地震、08年秋葉原連続殺人事件、08年岩手・宮城内陸地震など、大きな事件・事故のたびに日本精神衛生学会は緊急電話相談を開設して、PTSD発症防止に寄与するなどしている。

[吉川武彦]

『菅野泰蔵著『カウンセリング解体新書』(1998・日本評論社)』『西沢哲著『トラウマの臨床心理学』(1999・金剛出版)』『松下正明・浅井昌弘ほか編『外傷後ストレス障害(PTSD)』(2000・中山書店)』『藤沢敏雄編『トラウマ――心の痛手の精神医学』(2002・批評社)』

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内科学 第10版 「PTSD」の解説

PTSD(外傷後ストレス障害)(心身症)

定義・概念
 PTSD(posttraumatic stress disorder:外傷後ストレス障害)とは,不安障害に分類される精神疾患で,生命の危険が及ぶような体験後に生じる重症の疾患である.多くは慢性の経過を取り,再体験(想起),回避,過覚醒の3つが主要な症状である.
診断
 PTSDの診断基準としては,米国精神医学会のDSM-Ⅳ-TRによるものが代表的である(表1-6-10).D­SM-Ⅳ-TRでは,まず,Aの2つの事項を満たすような衝撃的な体験をしていることが求められる.さらに,B(再体験)の項目のうち1項目以上を満たし,C(回避)の項目のうち3項目以上を満たし,D(過覚醒)の項目のうち2項目以上を満たすことが求められる.そして,Eにあるように,1カ月以上,症状が持続していることが必須である.
病因
 いまだ病因は不明であるが,MRIによる研究で,海馬や左扁桃,前帯状皮質の体積の減少が報告されている.また,遺伝子と環境の相互作用の可能性も検討されているが,これまでのところ小規模な研究しか存在せず,結論は出ていない.
認知行動療法の効果が報告されている.特に,トラウマに焦点を当てた認知行動療法や暴露療法の効果が報告されているが,いずれも専門家の元で行うことが必要である.[吉内一浩・赤林 朗]
■文献
Engel GL: The need for a new medical model: a challenge for biomedicine. Science, 196: 129-136, 1977.
小牧 元, 久保千春,他編:心身症診断・治療ガイドライン2006, 協和企画,東京,
2006.日本心身医学会教育研修会編:心身医学の新しい指針.心身医学,31: 537-573, 1991.

PTSD

posttraumatic stress disorder,外傷後ストレス障害

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「PTSD」の意味・わかりやすい解説

PTSD
ピーティーエスディー

「心的外傷後ストレス障害」のページをご覧ください。

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