ケインズ経済学では,投資,政府支出などの独立的な需要が1単位増加したとき,国民総生産GNPが何単位増加するかを「乗数」と呼んでいるが,これを海外部門を含む開放経済に適用したものをいう。たとえば輸出が増加した場合,輸出の増加を dE ,限界貯蓄性向を s ,限界輸入性向を m とすると,GNPの変化分 dY は,dY=dE/(s+m) と表わされる。通常の乗数と比べると,限界輸入性向が考慮される分だけ乗数が小さくなる。これは増加した需要のうち,輸入によってまかなわれる分は,海外の生産が増加することになる,すなわちそれだけ国民所得からの漏れが大きくなるからである。