ケインズ経済学(読み)ケインズけいざいがく(英語表記)Keynesian economics

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケインズ経済学」の意味・わかりやすい解説

ケインズ経済学
ケインズけいざいがく
Keynesian economics

短期間の経済変動に焦点をあてた「需要重視」の理論で,マクロ経済学の主要な学派政府完全雇用対策に対する理論的基礎を提示することを目指した。ジョン・メイナード・ケインズが著作『雇用・利子および貨幣の一般理論』The General Theory of Employment, Interest and Moneyなどに示したもので,1970年代までの西ヨーロッパ各国の経済政策に大きな影響を与えた。賃金を低くすれば完全雇用は復活できると論じる経済学者に対し,ケインズ経済学者(→ケインズ学派)は,販売されない物品を生産するための労働者は雇われないと断言し,失業は物品・サービスに対する不十分な需要の結果であるとした。ケインズは,将来を予想した投資こそが経済活動のレベルを決定する力強い要因であり,政府の計画的な介入によって完全雇用は達成しうると主張した。ケインズ経済学者は,政府は税制や公共支出を通じて,物品・サービスに対する需要を保つことができるとしている。1970年代,景気後退(→リセッション)の緩和策としては貨幣供給量調整に限定すべきと主張するマネタリズム台頭によって,ケインズ経済学は勢いを失った。しかしその後,2007~08年の世界金融危機と続く不況の際,ケインズ理論の影響をうけた対応が成功したことから,修正されたケインズ経済学(いわゆる「新ケインズ主義」)に注目が集まった。

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