改訂新版 世界大百科事典 「多導体方式」の意味・わかりやすい解説
多導体方式 (たどうたいほうしき)
bundled conductor
送電線の導体を同じ電位をもつ2本以上の導体で構成する方式。多数の導体をスペーサーと呼ばれる金具で多角形の頂点に配置する。導体間の間隔は例えば40cmくらいである。三相交流を用いた送電線では各相に1条の導体を用いていた(単導体方式)が,送電電圧が高くなると導体表面の電界が強くなり,コロナ放電が発生して電力損失(コロナ損)やコロナ雑音を生じて問題になった。この解決策として導体の半径を太くして表面電界を減らす方法が行われたが,これにも限度があり,一相の導体を多数に分割してやや離して配置する多導体方式が発明されて解決した。同電位の導体をこのように配置することにより電界的には1本の導体の半径を太くしたのと同様の効果があり,また電界の強い部分の面積が限定される。戦後ヨーロッパの380kV系統にはじめて採用され,今日では超高圧以上の送電線に不可欠の技術になっている。
執筆者:河野 照哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報