夜前(読み)ヤゼン

デジタル大辞泉 「夜前」の意味・読み・例文・類語

や‐ぜん【夜前】

前日の夜。昨夜。ゆうべ。
「―、稀有な事がございましてな」〈芥川芋粥

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「夜前」の意味・読み・例文・類語

や‐ぜん【夜前】

  1. 〘 名詞 〙 前日の夜。昨夜。よべ。
    1. [初出の実例]「権帥去晦日夜前、自中宮、道順朝臣相共向愛太子山、至頼行自山脚罷帰了」(出典:小右記‐長徳二年(996)五月二日)
    2. 「夜半許に、夜前の如く、多の馬に乗れる人来ぬ」(出典:今昔物語集(1120頃か)一三)

夜前の語誌

和語の「よべ・よんべ・こよひ」にあたり、漢語の「昨夜(宵・晩・夕・暮)」の意味を表わす和製漢語公家日記などの記録体の文章に見られていたものが、中世には使用層の広がりを見せ説話や謡曲などに及ぶ。近世に入ると、芭蕉の手紙文に見られる一方、浮世草子、浄瑠璃、洒落本、咄本、滑稽本などにも見られ、口頭語としても広く一般に使われていたらしい。近代に入り、同じ意味の語として「ゆうべ」「昨夜」が使われるようになると、「夜前」は方言の性格をもつようになった。

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