夢之代(読み)ゆめのしろ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「夢之代」の意味・わかりやすい解説

夢之代
ゆめのしろ

山片蟠桃著。 12巻。文化2 (1805) ~4年にほぼ成立,文政3 (20) 年完成。晩年失明した著者が,師中井竹山,履軒の2人から聞いたことを子孫教誡のために書き記したもの。旧稿宰我の償』を増補,改題したもので,全編合理主義的態度に貫かれており,天文地理から神代歴代,制度,経済,経論,雑書,異端,無鬼 (上,下) ,雑論 (治病,衛生) などに及ぶ膨大な著作である。地動説に立つ独創的な宇宙観を樹立し,従来の宗教の神秘性や迷信を徹底的に批判した。宗教や政治がすべて人事 (人為) によることを強調し,記紀の神代史を批判し,神道説,仏説,鬼神論などを非とし,その論理の裏づけとして,自然に対する唯物的解釈を採用した。自然界の変化,作用の合理的把握は社会・経済論にも適用され,農本主義,商人的な営利的社会観などがみられ,当時としては貴重な思想書である。

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