大イスラエル主義(読み)だいいすらえるしゅぎ(英語表記)Greater Israel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大イスラエル主義」の意味・わかりやすい解説

大イスラエル主義
だいいすらえるしゅぎ
Greater Israel

離散したユダヤ民族がユダヤ国家を建設して復興と存続を目ざすシオニズムのなかで、主流派の社会主義シオニズムに対し、旧約聖書に登場する古代ユダヤ=イスラエル王国の最大版図を意味する「エレツ・イスラエル」(イスラエルの土地)を最重要視する非主流派、修正シオニズムの流れ。1920年代にヤボチンスキーVladimir Jabotinsky(1880―1940)によって組織化され、当時はヨルダン川東岸(現在のヨルダン)を含むユダヤ国家の建国を目ざした。1931年にヤボチンスキーらが設立した民族武装組織イルグンは、彼の死後、第二次世界大戦中からメナヘム・ベギン(後の首相)を指導者として反イギリス独立闘争を展開した。

 イスラエル建国後のイルグンの後継政党や右派政党が1973年に結成したリクードのほか、ヨルダン川西岸への入植地建設を支持する諸勢力が大イスラエル主義の流れを汲(く)む。1995年11月のラビン首相暗殺は、宗教的大イスラエル主義の過激派の青年による犯行だった。

 2010年には同地域への入植者が30万人を超えたが、そのうち大イスラエル主義者による入植地が4割以上を占めるといわれる。基本的には和平交渉で占領地返還や領土的妥協を拒むが、現状では占領地問題についてある程度の妥協もやむをえないとする現実派からいっさいの妥協を拒否する強硬派まで幅がある。

[勝又郁子]

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