改訂新版 世界大百科事典 「大蔵氏」の意味・わかりやすい解説
大蔵氏 (おおくらうじ)
数流あるが最も著名なのは古代・中世に九州で繁栄した一族。渡来人阿知使主(あちのおみ)の子孫という倭漢氏(やまとのあやうじ)が大和朝廷の大蔵(財政機関)を預かったことにより大蔵を称するようになる。天慶年中(938-947),藤原純友の乱に追討使として大蔵春実が九州に下向して以来,孫種材が刀伊の入寇に活躍するなど,その子孫は大宰府の官人として九州管内の各地に勢力をのばした。平安末期,平氏政権と結びついた大蔵(原田)種直が大宰権少弐に任ぜられ一族の多くも大宰府の要職をしめて勢威をほこったが,平氏滅亡とともに没落した。しかし原田,秋月,三原,田尻,高橋,江上,宝珠山など大蔵を本姓とする諸氏はその後も各地に活躍し,九州中世史に規定的な役割を果たした。中世末,豊臣秀吉の九州出兵に抵抗した秋月種実はその最後の人物ということができる。彼らは〈種〉を通字とする。このほか豊後日田郡の豪族日田氏も大蔵姓であるが,こちらは〈永〉を通字とする。
執筆者:有川 宜博
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