日本大百科全書(ニッポニカ) 「有川」の意味・わかりやすい解説
有川
ありかわ
長崎県西部、南松浦郡にあった旧町名(有川町(ちょう))。現在は新上五島町(しんかみごとうちょう)の東部を占める。旧有川町は1932年(昭和7)町制施行、2004年(平成16)若松(わかまつ)、上五島、新魚目(しんうおのめ)、奈良尾(ならお)の4町と合併、新上五島町となる。旧有川町域は、五島列島の中通島(なかどおりじま)の東半分を占め、国道384号が通る。中心集落の有川は有川湾に臨み、佐世保(させぼ)港からフェリーが通じている。また南部の鯛ノ浦(たいのうら)からは長崎港への定期便がある。東端の架橋されて陸路でつながった頭(かしら)ヶ島には1981年上五島空港が開かれ、長崎空港ならびに福岡空港と結ばれ、五島の北の玄関口となっていたが、2006年に全線廃止となり、現在、空港は閉鎖中。
有川港は旧藩時代、西海捕鯨(さいかいほげい)の基地として繁栄し、港口の鯨見(くじらみ)山には鯨供養碑がある。現在、地元での捕鯨は行われていないが、南氷洋捕鯨の乗組員を多く出して、西海捕鯨基地の伝統を保っている。地元漁業は湾内の大型定置網を主体としており、ブリの水揚げが大きい。鯛ノ浦湾、神ノ浦湾には真珠養殖もみられる。キリシタンの伝統をひくカトリック集落が多く、頭ヶ島、鯛ノ浦、船隠(ふなかくし)、佐ノ原(さのはら)などに教会がある。とくに、頭ヶ島天主堂は、この島の石を用いた石造建築で、国の重要文化財に指定されている。
[石井泰義]
『『有川町郷土史』(1974・有川町)』