大衆国家(読み)たいしゅうこっか(その他表記)mass state

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大衆国家」の意味・わかりやすい解説

大衆国家
たいしゅうこっか
mass state

19世紀末から 20世紀にかけて現れた大衆社会を基盤とする国家。産業革命の進展による独占資本主義形成は,人口の多くを雇用者にさせるとともに消費資料の画一化,生活様式の一様化をもたらし,同時にマス・コミュニケーション拡張によって意識面でも画一化された膨大な大衆を生み出した。教育の普及と労働運動の進展などにより大衆の社会的比重が急激に増大し,19世紀末から普通選挙制がとられ,政治の基盤は「教養財産のある」市民階級から形式的には社会の底辺にまで拡大された。しかし一方で,政治機構が巨大化し,大衆デモクラシーのにない手である大衆が結局は政治の客体としてパワー・エリートによって操作され,受動化,情緒化することから,いわゆる大衆民主主義の空洞化が生じた。ファシズムもそうしたなかから生み出されてきたのである。

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