社会的ヒエラルヒー(ヒエラルキー)、とりわけ政治上の位階制において重要な地位を保持している一群の人々をさす。C・W・ミルズの『パワー・エリート』(1956)で一般的となった概念。ミルズのとらえたパワー・エリートは、相互に重複しあい錯綜(さくそう)した関係にたつ一群の派閥として、少なくとも国家的影響を及ぼすような決定に参与している政治的、経済的、軍事的グループをさしたのであった。国家的事件の決定に関する限り、制度的秩序の頂点にたつ政治家、大企業経営者、上層軍人などのパワー・エリート層は、それらを決定する人々なのである。他方、リースマンのようにパワー・エリートの存在を否定する人は、拒否権行使集団veto groupsが政治体系を統御していると考え、かつて存在した単一の支配階級が崩れ、権力はあちこちに散在する多様な拒否権行使集団に譲り渡された、と考える(『孤独な群衆』1950)。この拒否権行使集団とは、さまざまな実業家集団、農民集団、労働組合、職業集団、人種的グループ、地域的利害を代表するグループなどで、自己への攻撃に対して、これを中和するだけの能力をもつ自己防衛的な集団である。
ミルズに代表される「構造的権力論」と、リースマンの「状況的権力論」にみられる、権力の集中と分散という、まっこうから対立するような権力像の分析は、その後の地域権力構造論争においても、権力エリート論者対権力多元論者という形で継承されている。
周知のように、今日まで西欧、アメリカにおけるパワー・エリートの検討は、マルクス主義的な支配階級の概念からいちおう切り離されて試みられてきている。支配階級ということばは、通常そこに含まれている政治的意味では、政治秩序とその諸機関に十分な自律性を与えていないからである。ミルズは、パワー・エリートという概念のほうが、階級という概念を使うよりも、政策決定にかかわる政治現象の記述と説明にとっては、はるかに有効な分析用具と考えたのである。V・パレート、G・モスカ、R・ミヘルス、R・アロン、R・A・ダールに至る多くのエリート論者の業績から、その問題点の多くを読み取ることができる。
[高島昌二]
『C・W・ミルズ著、鵜飼信成・綿貫譲治訳『パワー・エリート』(1958・東京大学出版会)』▽『D・リースマン著、加藤秀俊訳『孤独な群衆』(1964・みすず書房)』▽『秋元律郎著『権力の構造』(1981・有斐閣)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… C.W.ミルズは1950年代のアメリカの権力構造を明らかにするために,制度論的要素を重視した。ミルズは〈重大な結果を伴うような決定を下しうる地位〉を占めている人々をパワー・エリートと呼び,政治・経済・軍事のおのおのの頂点にいるパワー・エリートが,相互に密接な関連をもってアメリカを支配していると指摘した(《パワー・エリート》1956)。それは〈権力の分散〉〈自由競争〉〈多様な民兵制度〉を特徴としてきた,かつてのアメリカ社会が変貌して,今や連邦政府が圧倒的に州に優越し,連邦政府内部でも行政部に権力集中がなされていることの指摘でもあった。…
…第2次大戦後46年から没年まで,コロンビア大学の教授。出世作は《ホワイトカラー》(1951)だが,つづく《パワー・エリート》(1956)ではアメリカ社会の支配構造を分析し,激しく糾弾した。またT.パーソンズを頂点とするアメリカ社会学界の正統アカデミズム(構造‐機能分析)と鋭く対立しつづけ,《社会学的想像力》(1959)で論難した。…
※「パワーエリート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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