大野寺石仏(読み)おおのでらせきぶつ

国指定史跡ガイド 「大野寺石仏」の解説

おおのでらせきぶつ【大野寺石仏】


奈良県宇陀(うだ)市室生大野の宇陀川東岸にある鎌倉時代の石仏。大野寺は室生(むろう)寺の西の大門と呼ばれ、室生寺参詣の門戸の位置にあり、石仏は「屏風ケ浦」といわれる川瀬を挟んだ対岸の大岩壁に線刻されている。1916年(大正5)に実施された発掘調査では、各部の計測・採拓とともに、胎内の調査も行われ、1934年(昭和9)に国の史跡に指定された。高さ11.5mの石仏には胸部孔穴があり、直径約8cm、厚さ3cmほどの石蓋をはめ込んでいることが確認された。内部に小さな巻子(かんす)が検出されたが文字は判読できなかったという。腹部の臍(へそ)あたりにも孔穴があり、同じく石蓋の中から巻子が検出され、腐敗がひどく判読不能だったが、この2つの巻子は小銅筒を作って再埋納された。石仏に向かって左下方には約2.8m角の輪郭に直径2.2mの円形を彫り、中央に金剛界大日如来、周辺に諸仏、明王、童子を表す種字(しゅじ)が薬研(やげん)彫りされており、石仏と同時期のものとみられている。近畿日本鉄道大阪線室生口大野駅から徒歩約5分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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