大鵬の志(読み)たいほうのこころざし

故事成語を知る辞典 「大鵬の志」の解説

大鵬の志

ふつうの人には理解できないほどの、非常にスケールが大きな考えのたとえ。

[使用例] 大鵬南を図っていたずらにしょうりょうに笑われんのみ。余は遂に未遂大望を他に漏らすあたわざるなり[高浜虚子*子規居士と余|1911~15]

[使用例] 私が日本を出発するときの気慨は大変なものでしたよ。しろかなきん洋傘に、見よ大鵬の志を、なんの翼を、などと書きましてね[岡本かの子河明り|1939]

[由来] 「荘子しょうようゆう」に載っている話から。「大鵬」とは、北の海に住んでいるという、伝説上の鳥。体長は何百キロあるかわからず、何千キロもの高さまで飛び上がって、はるか南を目指して何か月もかけて飛んでいくのだそうです。しかし、ひぐらしと鳩は、その姿を見て笑って言います。「私たちは木の枝くらいの高さにだって、届かずに落ちてしまうことだってあるのに、あの鳥はどんなつもりで、あんな高さにまで上がって南に向かって飛んでいくんだろう」と。つまり、「小知大知に及ばず(小さなスケールでしかものごとを考えられない人には、大きなスケールの考えは理解できない)」のだと、荘子は述べています。

[解説] ❶大人物の考えていることは、小人物にはわかりません。大人物の立場から、まわりの無理解を笑う際に用いることもできますし、逆に、小人物の側に立って、「あの人の考えていることは、我々にはわからない」という意味合いで使うこともできます。❷似た故事成語に、「史記」に由来する「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんやがあり、しばしば混同して、「燕雀には大鵬の志がわからない」というふうにも用いられます。❸この話からは、「図南という故事成語も生まれています。

出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報

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