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未遂 みすいVersuch

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

未遂
みすい
Versuch

犯罪の実行に着手したにもかかわらず,これをなしとげなかった場合 (刑法 43) をいう。刑法に特に定められた場合にのみ処罰される (44条) 。実行に着手した点で予備と異なり,犯罪を完成しない点で既遂と区別される。犯罪の実行そのものが終了しなかったときを着手未遂 (または未終了未) ,実行行為は終了したが結果が発生しなかったときを実行未遂 (終了未遂) という。たとえば殺人の目的で刀を振上げたところ人に取押えられれば着手未遂,相手に刀を突刺したが致命傷にいたらず,死亡しなかったときは実行未遂である。また結果が発生しなかった理由が,犯罪の完成を妨げる客観的な事由にあるときを障害未遂といい,障害未遂は任意的な刑の軽減事由にとどまる。行為者が実行の着手後,自己の意思によって犯罪を中止した場合を中止未遂 (中止犯) といい (刑法 43但書) ,刑が減軽または免除される。障害未遂に対する概念。「自己ノ意思ニ因リ」の意義については,外部的事情によるか内部的動機によるかによって区別する説,中止するについて強制的に作用しうるような客観的事情があったか否かによる説,広義の後悔に基づく場合か否かによる説が対立している。行為の性質上,犯罪の成立が不能と考えられるような場合は処罰されない。これを不能犯 (不能未遂) という。なお英米法の attemptは,中止未遂を含まない。

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デジタル大辞泉の解説

み‐すい【未遂】

やりかけて、しとげないこと。「自殺未遂
犯罪の実行に着手したが、まだ成し遂げていないこと。⇔既遂。→障害未遂中止未遂

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百科事典マイペディアの解説

未遂【みすい】

犯罪の実行に着手しこれを遂げないこと。実行の着手があることで予備と区別され,犯罪の完成に至らないことで既遂と区別される。未遂には着手したが実行行為を完了しない場合(着手未遂)と実行行為を完了しても結果が発生しない場合(実行未遂)がある。
→関連項目強姦罪殺人罪傷害罪放火罪

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世界大百科事典 第2版の解説

みすい【未遂 attempt】

犯罪の実行に着手したが結果の発生に至らなかった場合をいう。未遂犯の刑は任意的に減軽されうる(刑法43条本文)。ただし,すべての犯罪について未遂犯が処罰されるわけではなく,〈未遂を罰する場合は,各本条で定める〉(44条)とされている。 犯罪的結果の発生を重視する客観主義の立場からは,未遂犯の処罰は例外的であり,かつ,必要的減軽主義がとられることになる。他方,犯罪者の犯罪的意思や危険性を重視する主観主義の立場では,既遂と未遂の間に本質的な差異はなく,すべての犯罪について未遂を既遂と同等に処罰すべきだということになる。

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大辞林 第三版の解説

みすい【未遂】

ある事をしようと計画しながら、目的を達しなかったこと。 「自殺-」
〘法〙 犯罪の実行に着手したが、その結果が発生していない状態。 ↔ 既遂中止未遂障害未遂

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

未遂
みすい

犯罪の実行に着手したが目的を遂げなかった場合をいう。これに対し、目的を遂げる場合を既遂という。未遂は民法上は問題とならないが、刑法では、未遂を罰すべきか、また、どのような場合に罰しうるかが大いに問題となる。行為者の主観を重視すれば、犯罪を犯す意思でなんらかの行為に出た以上、処罰するのが当然であるということになるが、逆に、結果を重視すれば、犯罪的結果を実現していないから不可罰とすべきだ、ということになる。この点につき現行刑法第43条では、犯罪の実行に着手したが、これを遂げなかった者はその刑を減軽することができる、ただし、自己の意思により犯罪を中止したときはその刑を減軽または免除する、と規定されている。また、同法は、未遂犯を罰する場合は各本条においてこれを定める、と規定する(44条)。このように、現行刑法では、未遂は原則として不可罰とされ、しかも未遂犯の刑も減軽することができるとされている。未遂犯の処罰根拠として、今日では、犯罪的意思をもって、法益に対する危険、とくに具体的危険を生じさせたことがあげられる。
 ところで、刑法第43条にいう「実行の着手」の意義につき、客観説と主観説との対立があるが、通説・判例である客観説によれば、犯罪構成要件に該当する行為を開始することとか、法益に対する具体的危険性を生じさせる行為を行うこと、と解される。この点に関連して、実行の着手時期が問題となるが、判例は、窃盗罪(刑法235条)につき、たとえば住居侵入窃盗では、住居に侵入したのち、金品を物色する行為を始めた時、すりについては、被害者のポケットに手を触れた時に、実行の着手があるものと解している。なお、未遂犯は犯罪の目的を遂げないことを要するが、犯罪結果が生じていても行為者の行為と因果関係が欠ける場合には、やはり未遂犯とされる。ただ、未遂犯のうち、行為者が「自己の意思により」犯罪の実現を「中止した」場合は、その刑が減軽または免除される(刑法43条但書)。このような場合を中止犯(中止未遂)とよび、外的障害により犯罪を実現しない障害未遂(狭義の未遂犯)と区別される。[名和鐵郎]

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世界大百科事典内の未遂の言及

【犯罪】より

… 〈実行行為〉に当たるものが存在しない場合として,たとえば〈不能犯〉がある。不能犯とは,行為がその性質上結果を発生させることのおよそ不可能なものであり,未遂犯として罰せられることはない。たとえば,人を祈り殺そうとして〈丑(うし)の刻参り〉をするような迷信犯は,不能犯の典型的な例である。…

【量刑】より

… (1)再犯加重とは(3犯以上の場合にも同じ――総称して累犯という),前に懲役に処せられた者が,その執行を終わりまたは執行の免除を受けた日から5年内に,さらに罪を犯して有期懲役に処すべき場合,長期が2倍となることをいう(56条以下)。(2)法律上の減軽は,過剰防衛(36条2項),未遂(43条),あるいは犯人が自首をした場合(42条)などに認められる(複数の事由があっても,法律上の減軽としては一括される)。この減軽により,死刑を無期または10年以上の懲役もしくは禁錮に,無期の懲役・禁錮を7年以上の有期の懲役・禁錮にするほか,刑期や金額を2分の1とするなどの措置がとられる(68条)。…

※「未遂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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