日本大百科全書(ニッポニカ) 「天体写真儀」の意味・わかりやすい解説
天体写真儀
てんたいしゃしんぎ
astrograph
写真術が発明される以前には星図や星表は、個々の天体を肉眼で観測して記録してゆくという方法で行われていた。天体写真の出現により、多くの天体を一つの写真乾板に写せるようになった。そして、より広い範囲をゆがみなく写せるようにくふうされた望遠鏡がつくられるようになった。これが天体写真儀である。
天体写真儀では焦点位置に写真乾板が置かれるので、撮影中肉眼で観測量を見ることができない。望遠鏡を正確に日周運動に追尾させるために、写真乾板の外側の焦点面上に接眼レンズを置いたり、望遠鏡を二連にして他方の望遠鏡を使ったりして、星像のずれのない写真を撮るくふうがなされている。
アメリカのリック天文台の天体写真儀によってリック写真星図がつくられている。また、シュミット・カメラの発明によりパロマ写真星図もつくられている。
[磯部琇三 2015年5月19日]
『西条善弘著「小型捜天写真儀を作る」1~3(月刊天文ガイド編集部編『月刊天文ガイド』第37巻第8号~10号所収・2001・誠文堂新光社)』