日本大百科全書(ニッポニカ) 「写真星図」の意味・わかりやすい解説
写真星図
しゃしんせいず
photographic star atlas
天体写真を用いてつくられた星図。古くは天体の位置を書き込んだ手書き星図が用いられたが、写真技術の導入により、均質で暗い天体まで収めた星図が容易につくられるようになった。全天をカバーした星図としては「フランクリン‐アダムズ写真星図」(1914)が最古のものであるが、近年の代表的なものとして「パロマー掃天星図」(1960、1972)があげられる。これは、アメリカのパロマー山天文台の大型シュミット・カメラにより撮影されたもので、20等級を超える深さで北天から赤道帯までが収められている。その後設置された南半球の大型シュミット・カメラによる南天の撮影も加え、全天の写真星図が完成した。現在これらの写真星図はデジタル化され、デジタイズド・スカイ・サーベイ(DSS)として公開されている。
写真星図には星団・星雲・銀河・銀河団などの姿や形態がそのまま記録されているので、これらの天体のカタログは写真星図を基礎にしてつくられたものが多い。1980年代以降、CCD(電荷結合素子)カメラによる撮像が写真にとってかわったが、受光面積の小さいCCDで広い天域をカバーするのは容易なことではない。1990年代前半から、全天をカバーする計画として、スローン・デジタル・スカイ・サーベイSloan Digital Sky Survey計画(SDSS計画)がアメリカ、日本、ドイツ等の国際共同研究として進行している。
[前原英夫]
『日本天文学会編『新版 星図星表めぐり――その活用百科』(1989・誠文堂新光社)』