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天体写真 てんたいしゃしんastrophotograph; celestial photography

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

天体写真
てんたいしゃしん
astrophotograph; celestial photography

天体および天文現象に関する写真。太陽,惑星,小惑星,衛星,彗星,惑星間物質,恒星,星間物質,星団,星雲,銀河,銀河団などの位置や形状測定のための写真星図および前記天体の部分写真などの総体。天体望遠鏡の焦点位置により撮影されるが,一般的に屈折系は位置測定,反射系は天界の部分の詳細撮影に適する。暗い天体では長時間露出を要するので,赤道儀あるいは望遠鏡の方向を天体の日周運動に合わせて追尾する装備が必要である。収差を取り除いた反射,反射屈折系のシュミット望遠鏡(→シュミットカメラ),カセグレンシュミットなどが用いられる。太陽や月は使用レンズの焦点距離の 100分の1程度の大きさに写すことができる。1000mm以上の望遠レンズあるいは長焦点レンズがあれば,精度の高い像を得ることができる。天体写真の撮像部(カメラ)には,以前は写真乾板が用いられたが,現代では電荷結合素子 CCDなど電子媒体による量子効率の高い受光素子が用いられる。画像は電子的に記録(記憶)されて計算機によって処理され,ディスプレイ上に可視化して表示,あるいは印刷される。

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デジタル大辞泉の解説

てんたい‐しゃしん【天体写真】

天体の状況を、望遠鏡を用いて精密に撮影した写真。天文写真。

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百科事典マイペディアの解説

天体写真【てんたいしゃしん】

天体の観測を目的とした写真。写真による天体観測は1850年ごろから始まり,機器や写真材料の発達改良もあって,さまざまな成果を天文学にもたらしてきた。撮影はふつう,天体望遠鏡の対物鏡焦点面に乾板をおいて露出を行う。

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世界大百科事典 第2版の解説

てんたいしゃしん【天体写真】

19世紀半ばに写真が発明されるとすぐ天文学への応用が始まった。M.ウォルフやE.E.バーナードの活躍が著しい。技術的には写真用色消しの長焦点屈折鏡,広視野のアストログラフ,さらに広視野をねらったシュミットカメラを生み出した。写真利用の一つの頂点としてパロマーの48インチシュミット望遠鏡によるパロマー写真星図がある。現在,ヨーロッパ南天天文台やイギリス・オーストラリア連合天文台のシュミット望遠鏡による南天の写真が追加されている。

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大辞林 第三版の解説

てんたいしゃしん【天体写真】

天体の表面や天文現象、天体のスペクトルなど、天体を写した写真の総称。一般には天体は暗いので長時間露光を行うために日周運動を追尾して撮影することが多い。最近は CCD カメラもよく用いられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

天体写真
てんたいしゃしん
astronomical photography

天体の位置、形状、その分布状態などを写真によって記録するものをいう。フランスのダゲールが銀板写真技術を1839年に発明し、その翌年にアメリカのドレーパーが月の写真撮影に成功したが、それ以後天体の写真撮影は急速に発達した。1845年にはフィゾーらによって太陽の写真が写され、1851年にはベルコウスキーJohann Julius Friedrich Berkowskiによって皆既日食の写真が写された。太陽や月よりも一段と暗い恒星の写真も1850年にアメリカのボンドWilliam Cranch Bond(1789―1859)によって写されている。
 写真術がいち早く天体観測に取り入れられた理由は、客観性のある記録を残せることである。それまでは眼視観測をしており、観測者の経験や能力により見え方が異なっていたので問題が多かった。初期のころの写真は非常に感度の悪いものであったが、長い年月の間に次々と改良が加えられ、現在では目の感度に匹敵するものがつくられるようになった。
 写真観測を行う利点は、(1)露出時間をかけることにより光のエネルギーを蓄積できる、(2)短時間露光によって太陽のような明るい天体も撮影できる、(3)光の量を肉眼より精度よく測定できる、(4)肉眼に感じない紫外線や赤外線でも撮影できる、(5)人間が行くことがむずかしい大気圏外での観測を可能にした、(6)客観性のあるデータを長期間保存できる、などである。
 このような特徴があるために、次のような天体観測の分野で写真観測が行われて、数多くの成果を生み出してきた。(1)時刻観測や緯度観測(写真天頂筒など)、(2)天体の精密位置の測定と星図、星表の作成(アストログラフなど)、(3)惑星や月、流星、彗星(すいせい)などの平面形状の観測(惑星写真儀など)、(4)天体のスペクトル観測(分光写真儀など)、(5)星団や星雲、銀河内での天体の分布や位置の観測(シュミット・カメラなど)など。しかし、天体写真では明るさの測定精度が0.1等級程度しかなく、一つ一つの星のよりよい精度の観測のために光電子増倍管を使った観測が行われるようになった。また、近年の電子技術の発達により、写真と同様に二次元の受光面をもった受光素子が使われるようになってきた。これは感度と精度が写真よりよく、入射光量に比例した出力が数値データとして得られ、コンピュータによる画像処理が直接できるので、近代的な天文台では多く使われるようになっている。
 ただ、1枚の写真乾板に含まれる受光乳剤の数は何億個を超える膨大な数になっており、データを記録しておく点においては、画素数が百万程度の当時の受光素子より優れていた。そのため広視野を同時に観測するようなシュミット・カメラなどによる観測には写真が有効であった。一方、CCD(電荷結合素子)に代表される受光素子の感度は目の感度を凌駕(りょうが)するまでに向上し、1000万画素規模の大型のものも供給されるようになった。そのため、1990年代には、大型の写真乾板やフィルムの製造が中止された。以後、半導体技術の進歩に伴い、受光素子の性能は飛躍的に向上している。多数のCCDをモザイク状に並べて受光面積の広いカメラがつくられるようになってきた。たとえばハワイ観測所のすばる望遠鏡に搭載されている超広視野カメラHSC(Hyper Suprime-Cam。116個の高感度CCDからなる合計8億7000万画素の巨大なデジタルカメラ)は、満月9個分の広さの天域を一度に撮影できる。2013年にアンドロメダ銀河M31のほぼ全体を一視野でとらえたファーストライト画像が公開された。
 風景や人物を写す普通の小型カメラでも天体写真を撮ることができる。カメラを夜空に向けて固定しておいただけで、天体の日周運動を写すことができる。カメラを望遠鏡に取り付けて撮影すると拡大して写せる。ただし、恒星は非常に遠いので1秒角より小さく、いくら拡大しても大気の揺らぎによる広がりしか写らない。カメラや望遠鏡を赤道儀などを用いて日周運動にあわせて動かしながら撮影すると、星野(せいや)写真や星団・星雲・銀河のきれいな天体写真を撮ることができる。惑星の撮影のためには、それぞれの惑星の固有の動きにあわせたり、露出時間を短くする必要がある。[磯部三・宮内良子]

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世界大百科事典内の天体写真の言及

【科学写真】より

…顕微鏡や分光撮影装置(分光写真)なども同様で,この分野の光学機器は種類が多い。天体撮影では星のスペクトルの研究や,位置の測定,明るさ(等級)の測定など,写真(天体写真)によって初めて研究が可能になる。ホログラムによる立体像,魚眼レンズやパノラマカメラによる空間の解析,ガストロカメラによる消化器官内部の観察なども代表例といえる。…

※「天体写真」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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