天王寺屋会記(読み)てんのうじやかいき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「天王寺屋会記」の意味・わかりやすい解説

天王寺屋会記
てんのうじやかいき

茶会記録の書。堺(さかい)の豪商天王寺屋津田宗達(そうたつ)、宗達の嫡子宗及(そうきゅう)、宗及の子宗凡(そうぼん)と江月宗玩(こうげつそうがん)の3代にわたる茶会記録であるところから、現在『天王寺屋会記』の名で総称されている。内容は津田宗達の1548年(天文17)から66年(永禄9)に至る自他会記各2巻、宗及の1565年(永禄8)から87年(天正15)に至る他会記4巻、1566年(永禄9)から87年(天正15)に至る自会記5巻、これに宗及の1566年(永禄9)から72年(元亀3)に至る道具拝見記1巻、同じく1583年(天正11)から87年(天正15)に至る大坂における自会記1巻、宗凡の1590年(天正18)の他会記、同じく宗及の子で大徳寺156世となった江月宗玩の1615~16年(元和1~2)の他会記1巻の、あわせて16巻からなる。現存する同記には千利休(せんのりきゅう)、山上宗二(やまのうえのそうじ)、春屋宗園(しゅんおくそうえん)など37通の消息の紙背を使った部分も含まれており、自筆の箇所もあると考えられている。単なる茶会記録としてばかりでなく、織田信長から豊臣(とよとみ)秀吉に至る桃山期の歴史的事実を探るうえでも貴重な資料となっている。

[筒井紘一]

『千宗室監修『茶道古典全集 (7)・(8)』(1970・淡交社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の天王寺屋会記の言及

【茶事】より


[茶事の記録]
 茶事の記録を茶会記,また単に会記と称する。四大茶会記として,堺の天王寺屋3代(津田宗達・宗及・宗凡)にわたる《天王寺屋会記》(1548‐90),奈良の漆問屋松屋源三郎家の3代(松屋久政・久好・久重)の断続する《松屋会記》(1534‐1650),今井宗久による1554‐89年の自他の茶会計83会を記した《今井宗久茶湯日記書抜》および博多の富商神屋宗湛の《宗湛日記》(1586‐1613)が,利休を中心とする茶の湯全盛時の茶事の内容を詳細に伝えている。近世に入ると,近衛家熙の行状を記した山科道安の《槐記》が出色であり,その他無数の茶会記録が伝存している。…

【津田宗及】より

…有名な北野大茶湯では,利休とともに指導的役割を担った。宗達,宗及,宗凡3代にわたる《天王寺屋会記》は,《松屋会記》《今井宗久茶湯日記抜書》《宗湛日記》とともに四大茶会記といわれ,貴重な資料となっている。【筒井 紘一】。…

※「天王寺屋会記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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