子どもの行動チェックリスト(読み)こどものこうどうちぇっくりすと(英語表記)Child Behavior Checklist

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

子どもの行動チェックリスト
こどものこうどうちぇっくりすと
Child Behavior Checklist

幼児期から思春期までの子供の情緒行動、社会性を包括的に評価する方法の一つ。略称CBCL。アメリカの心理学者アッケンバックThomas M. Achenbach(1940― )らによって開発されたアッケンバック実証に基づく評価システム(ASEBA:Achenbach System of Empirically Based Assessment)のなかの一つの調査手法である。子供の状態に関する質問への回答結果に基づいて生活能力や問題行動を診断し、支援や治療の必要性を検討するために用いられる。就学前の軽度な発達障害児を鑑別する数少ない方法の一つであり、質問票は90以上の言語に翻訳されて世界中で使用されている。日本でも心理学や精神医学の研究現場をはじめ、一般の医療機関や児童相談所などにおいて幅広く利用されている。

 おもに2~3歳までの幼児用(CBCL/2-3)と4~18歳までの学齢児童用(CBCL/4-18)の2種類があり、両親などの養育者が最近6か月の子供のようすについて回答する。子供の問題に関するおよそ100項目の質問と、心配なことなどを自由に記入する項目で構成され、質問への回答は、0(当てはまらない)、1(やや当てはまる)、2(よく当てはまる)から選択する。回答結果は点数化され、引きこもりや不安・抑うつなどの傾向が強い内向尺度、攻撃的行動や非行的行動の傾向がある外向尺度などを表すものとして分類され、総合的に評価される。子供の問題行動の傾向や特徴を的確に把握することができるため、その後の援助介入判断にも用いられる。

 2011年(平成23)の東日本大震災で被害を受けた岩手宮城、福島3県の保育園児と両親を対象に厚生労働省が行っている精神的問題調査でCBCLが採用された。この調査は2012年9月から開始され、以降10年間にわたって同じ子供に同じ調査を繰り返し行い、精神状態やその変化の把握を目ざしている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例