岩手(読み)いわて

精選版 日本国語大辞典 「岩手」の意味・読み・例文・類語

いわて いはて【岩手】

[一] 岩手県の北西部の郡。北上川の上流域にあり、旧郡域の南部は現在、盛岡市。
[二] 「いわてけん(岩手県)」の略。

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デジタル大辞泉 「岩手」の意味・読み・例文・類語

いわて〔いはて〕【岩手】

東北地方北東部の県。太平洋に面し、かつての陸中のほぼ全域と陸前陸奥むつの一部を占める。県庁所在地盛岡市。人口133.1万(2010)。

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改訂新版 世界大百科事典 「岩手」の意味・わかりやすい解説

岩手[県] (いわて)

基本情報
面積=1万5278.77km2(全国2位) 
人口(2010)=133万0147人(全国32位) 
人口密度(2010)=87.1人/km2(全国46位) 
市町村(2011.10)=13市15町5村 
県庁所在地=盛岡市(人口=29万8348人) 
県花=キリ 
県木=南部アカマツ 
県鳥=キジ

東北地方の北東部に位置する県で,南北195km,東西123kmの南北に伸びる紡錘形をなす。太平洋に面し,海岸線の延長は666km。面積は全国都府県のうち最も広く,北海道に次ぐ。人口密度も北海道に次いで希薄である。

近世には陸奥国のうち,南部氏盛岡藩と伊達氏の仙台藩,一関藩に属した。1868年(明治1)戊辰戦争の結果,盛岡藩20万石は白石13万石に移され,仙台藩,一関藩も減封され,また陸奥国は5国に分割された。現在の岩手県域は陸中国の大部分と陸前国,陸奥国の一部にあたる。69年南部氏は盛岡に復帰し,没収地には胆沢(いさわ),江刺,九戸(くのへ)の諸県が置かれた。71年廃藩置県をへて,これらは一関県(のち水沢県,磐井県と改称)に合併された。1870年に盛岡藩を廃して置かれた盛岡県は72年岩手県と改称し,76年磐井県のうち陸中国の3郡を併せたのち,宮城県,青森県の一部を合併して,現在の県域が定まった。

岩手県の先史・古代史は,県の中央を北から南へ貫流する北上川を大動脈として展開した。先土器文化は,東北地方有数の大台野遺跡(和賀郡西和賀町)をはじめ,県内各地で明らかにされつつあるが,本格的調査はこれからといってよい。

 岩手は縄文の国である。北上川流域では早期の蛇王洞洞穴(気仙郡住田町)や前・中期の配石遺構を伴う樺山遺跡(北上市,奥州市),後・晩期の貝鳥貝塚(一関市)などがある。三陸沿岸は当然,内湾性のアサリや岩礁性の貝類などからなる貝塚が多く,マグロのような大型魚骨や銛などの骨角器も豊富に出土して,活発な漁労活動を示す。前・中期の蛸の浦貝塚(大船渡市)や晩期大洞(おおぼら)式の標式遺跡である大洞貝塚(大船渡市)などはその代表例である。後・晩期の遺跡は北上川流域にも多い。晩期前半までは遺跡が大規模で器種が分化し,特殊遺物がふえる。配石遺構中に土偶が出土した雨滝遺跡(二戸市)をはじめ,萪内(しだない)遺跡(盛岡市),八天遺跡(北上市),九年橋遺跡(北上市)など枚挙にいとまがない。

 これだけ縄文晩期文化の発達した土地だけに,弥生文化が伝播してきた後もその伝統は色濃く残る。谷起島(やぎしま)遺跡(一関市)はこうした過渡期の様相をよく示す。また常盤遺跡(奥州市)は合せ口甕棺,玉類,籾痕のある土器片などを出土した本県の代表的弥生遺跡である。弥生後期の遺跡は山間部にまで分布を広げる。

 北上平野では古式の土師器を出土する遺跡もあり,5世紀までに稲作村落が出現していたことがわかるが,ことに胆沢(いさわ)平野には,円筒埴輪をもち,県内唯一,また日本列島最北の前方後円墳である角塚古墳(奥州市)があって,6世紀初めまでにはこのあたりに支配者が登場したことを示している。だが,岩手の古墳は江釣子古墳群(北上市)のように多くが8世紀代の,いわゆる終末期群集墳で,同時期の竪穴集落と対をなしつつ北上川中~上流域に分布する。これら奈良時代前後の遺跡は,当然古代蝦夷の問題と密接な関連をもつと思われるが,直接,律令政府の対蝦夷政策の拠点として置かれたのが,胆沢城(奥州市),徳丹(とくたん)城(紫波郡矢巾町),それに志波(しわ)城(盛岡市)である。平安時代に入ると鉄器がおおいに普及し,稲作がさらに一般化し,瀬谷子古窯址群(奥州市)にみるようにろくろを使用し,窯を築いての須恵器の大量生産が開始される。なお,江別式,北大式,擦文式など,北海道系の土器文化が点々と出土するのも本県の特色といってよい。
陸奥国

岩手県の地は,〈みちのく〉といわれた奥州のうちでも中央文化からほど遠い辺境の地とされてきた。8世紀中ごろ奥州開発が積極化し,坂上田村麻呂の蝦夷攻略を通して岩手は北上川沿岸から開かれ中央と結びつけられていった。奥州藤原氏が平泉の地に独自の黄金文化を築いたが,中世の岩手は鎌倉御家人によって分割支配され,盛衰・興亡をくりかえした。中でも南部氏は馬産の盛んな糠部郡(二戸・九戸両郡から青森県三戸・上北・下北各郡,秋田県鹿角郡)を領し,近世になって,盛岡藩内には閉伊郡小友(おとも)金山や鹿角郡白根金山,尾去沢銅山などが開発され,三陸沿岸からは幕府長崎貿易の見返品として重要な三陸俵物(海産物)を出荷していた。しかしここに住む人々は寒冷な北国において,最も不利な条件にある農業に頼らなければならなかった。岩手の農民生活史が悲惨な冷害凶作の連続であったのも,このためといえよう。また明治に入ってからも,近代産業の先駆といえる釜石の製鉄業を例外として,中央の大消費市場から遠いことが,さまざまな産業で岩手の発展を遅らせてきた。

 1890年東北本線が上野~盛岡間に開通し,以後舟運,街道交通は衰えていった。1991年東北新幹線は東京~盛岡間が全通,2002年12月には盛岡~八戸間が開通して,首都圏から3時間前後に短縮され,97年春には秋田新幹線(田沢湖線)が開通して,〈白河以北一山百文〉という言葉は,今や過去のものとなった。なお東北新幹線の八戸延長に伴い,東北本線盛岡~八戸間のうち県内分はIGRいわて銀河鉄道の運営となった。さらに東北自動車道が86年青森市まで全通,97年秋田自動車道も全通して,〈中央に遠い北国〉という古くからの課題が,ようやく克服されてきた。

岩手県は,北上川縦谷盆地(北上盆地)とそれをはさむ奥羽山脈北上高地の3条の巨大な地形によって特色づけられ,東縁は三陸海岸線となっている。南流する北上川は一関市の狐禅寺付近で北上高地を横切るとき,宮城県域も含めて約25kmに及ぶ峡谷を形成している。近世に北上川舟運が上流部の盛岡までさかのぼって物資や文化の輸送路となってきたのも,この峡谷部があるために豊かな水量が上流部にたたえられ,流れのゆるやかな河川であったことによる。しかしその反面,水はけが悪く,3年に1度は洪水におそわれてきたが,特に1947年のカスリン台風,翌年のアイオン台風による被害は,一関付近を中心に惨状をきわめた。これを契機として53年アメリカのTVAの経験をとり入れた北上川特定開発によるダム建設時代を迎えた。80年までの間に石淵ダム(胆沢川),田瀬ダム(猿ヶ石川),湯田ダム和賀川),四十四田(しじゆうしだ)ダム(北上川),御所ダム(雫石川)の五つの多目的ダム(洪水調節,発電,灌漑)が築かれた。これらによって,稲の県内総作付面積は昭和20年代の約1.7倍に当たる10万ha(1995)にも達し,収穫量の7割を〈岩手米〉として移出する米の生産県へと発展した。岩手県では主として千島海流の発達に伴う夏季の冷温や,北部海岸に多いガスや日照不足によって,農作物に冷害がおこりやすい。耕地面積の4割を占める畑作農業は,冷害に強いヒエを中心とした雑穀農業であったが,近年は葉タバコ,ホップ,リンゴ(いずれも出荷量は全国5位以内)や,高原野菜などの換金作物および畜産の導入がはかられた。特に中世以来の伝統をもつ北上高地での馬産は,明治以後,馬から役牛,肉牛へ,さらに昭和に入って乳牛へと移行し,1996年乳牛,肉牛の飼養頭数はともに全国5位以内へと増加し,北上山系の畜産開発とともに広い原野をいかした肉酪供給県としての地位を高めている。しかし,県内農家戸数は漸減し,全体の約1割を占める専業農家の割合は大きな変化がないが,第1種兼業農家は全体の約2割に減少し,第2種兼業農家が7割弱と激増した。

岩手県の産業構造の特色は,就業別人口において第1次産業が全体の18.8%(1992)を占めて全国で青森県に次いで高く,農業への傾斜の強いことである。しかし,高速交通の整備は大都市からの企業進出を容易にし,産業構造の高度化への可能性を一段と高めている。

 明治以降,岩手県工業の先駆をなしたのは明治20年代に盛んになった製糸業と,1857年(安政4)南部藩士大島高任によって日本最初の洋式高炉が建設され釜石鉱山の鉄鉱石を原料として開始された製鉄業であった。その後,製糸業が衰退し,釜名鉱山は93年終掘,釜石製鉄所(1970年より新日本製鉄)も相次ぐ合理化によって,往年の活気は失われてきた。県では1955年以来,工場誘致に乗り出し,1995年現在,精密機械,電気機器,輸送用機器,一般機器などの業種が目立っている。特に北上川筋は,国道4号線とほぼ平行して東北自動車道,東北本線および新幹線が走り,その中央部に花巻空港(1964設置)が位置する。これと結びついて金ヶ崎中部工業団地,一関東工業団地,北上工業団地,江刺中核工業団地など,〈企業ニュータウン〉の形成が進められた。自動車道では,京浜・京阪神両市場をめざし,水産物や野菜,果樹,畜産物を運ぶ大型トラックが定期便のように南下する光景が見られ,近年はこれに加えて先端技術産業の工業製品なども陸上輸送されている。ここに盛岡,花巻,北上,水沢,江刺,一関の内陸部都市を母体に,先端技術,IC(集積回路)産業の導入をはかる〈北上ライン先端技術工業地帯〉の構築が進められている。なお,伝統工業として近世以来の南部鉄器,漆器工業の秀衡(ひでひら)椀や岩谷堂たんすなどの工芸品が生産されている。

県内は自然条件,人文条件の違いから東西に並ぶ次の三つの地域に分けられる。

(1)北上川縦谷盆地 北上川に沿う低地帯で,北上盆地とも呼ばれ,流域面積1万0150km2,そのうち約8割が岩手県分で利根川,石狩川,信濃川に次いでいる。県内では最大の平野部であり,その西側は河岸段丘扇状地が発達し,奥羽山脈の断層崖に続いている。かつてはこれらの扇状地や台地の末端に胆沢城(802)や志波(しわ)城(803)などが築かれ,沖積地とともに早くから東北開拓の拠点となった。江戸時代は北上川が舟の交通路となり,奥州街道も南北に走り,現在の一関,水沢,黒沢尻(北上市),花巻,盛岡などのおもな都市は,当時の宿場町や河港集落を母体として発展した。この地域は県の穀倉地帯であり,幹線交通路も集中している。藤原文化を受けつぐ歴史の町平泉や花巻温泉郷などは,東北観光ルートの基地でもある。

(2)奥羽山脈東麓地帯 北部には七時雨(ななしぐれ)山に続く高原があり,八幡平,岩手山,駒ヶ岳など1500m前後の山々が集まって十和田八幡平国立公園の雄大な自然美を作り出している。その中でも岩手山(2041m)は南部富士ともいわれる円錐状火山で,付近に多くの温泉が湧出し,松川地熱発電所(2万3500kW),葛根田(かつこんだ)地熱発電所(8万kW)などもあり,北東北(きたとうほく)の観光の中心地となっている。南部は栗駒山と焼石岳を結ぶ栗駒国定公園で,須川(すかわ),夏油(げとう)などの温泉をもつ山岳公園が広がる。奥羽山脈を東西に横切る交通は,今では白木峠近くに秋田自動車道,国道107号線とJR北上線が走り,米代川に沿って花輪線,東北自動車道,仙岩峠をこえる秋田新幹線(田沢湖線)が通じている。

(3)北上高地と三陸沿岸地帯 岩手県の東半分を占める高地(山地)で,なだらかな準平原が続き,高い山の少ないかわりに奥行きの深い山系である。一段と高い早池峰(はやちね)山(1914m,国定公園)や五葉(ごよう)山,兜明神(かぶとみようじん)岳,姫神山などの山々は,浸食から残された残丘である。この山地では砂鉄を多く産し,燃料の木炭と結びついて砂鉄製鉄が盛んとなり,17世紀中ごろ以後,藩の奨励もあって南部鉄器の製造業が発展した。また,準平原の平たん面を利用して中世以来南部馬の産地として知られ,近年は酪農と畜産を柱とした北上山系開発が進められている。集落が山ひだに点在する山村であるために,畑作儀礼,狩猟儀礼,南部曲家形式の建物などが多く残る民俗学の宝庫でもあり,柳田国男の《遠野物語》で有名な遠野盆地は,〈民話・伝説のふるさと〉として観光客が跡を断たない。

 北上高地が太平洋に向かって落ち込む三陸海岸は,地形的には宮古以北の隆起性の段丘海岸と以南の沈降性のリアス海岸に分けられるが,陸中海岸国立公園の景勝地である。沖合には豊かな三陸漁場をひかえ,養殖漁業も盛んで,久慈,宮古,釜石,大船渡,陸前高田などの都市がある。高地を横断する交通にはJR山田線,釜石線,大船渡線があり,1984年には三陸沿岸を南北に走る第三セクターによる三陸鉄道が開業した。高地北部の八戸自動車道は89年開通したが,高地を縦断する国道340号線の整備,高地の横断高速道の整備などが今後の課題となっている。
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岩手[町] (いわて)

岩手県北部,岩手郡の町。人口1万4984(2010)。北上高地と奥羽山脈のはざまにあり,標高300~500mのゆるやかに起伏する丘陵性山地が広く分布する。中央西寄りを南流する北上川に沿って東北本線(現,IGRいわて銀河鉄道),国道4号線が走る。中心集落の沼宮内(ぬまくない)は奥州街道の宿駅として古くから発達し,現在は東北新幹線のいわて沼宮内駅がある。米作,タバコ栽培,畜産を中心とする農林業が基幹産業である。北上川の源泉である弓弭(ゆみはず)の清水が湧く北上山御堂観音が御堂地区にあり,参詣人や観光客でにぎわう。
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