日本大百科全書(ニッポニカ) 「子嚢果」の意味・わかりやすい解説
子嚢果
しのうか
子嚢菌類の繁殖器官(子実体)をいう。形成過程は、まず、胞子から生じた単相菌糸体が和合性のある他の単相菌糸体とともに小菌糸塊をつくり、その中で接合が行われる。ついで、子嚢をつくるための造嚢糸が生じ、菌糸組織が発達して子実体となる。子実体は生物体、腐植質その他の基物の内外に形成される。1ミリメートル以下の球形やとっくり形のものは偽(ぎ)被子器、被子器(子嚢殻)とよばれ、子嚢層(子実層)を裸出しているものは裸子器(子嚢盤)とよばれる。盤状の裸子器では10センチメートルを超える場合もあり、その形もいろいろである。
偽被子器は小房(しょうぼう)子嚢菌類の子嚢果で、小菌糸塊内の一部の菌糸が崩壊して空所(小房)ができ、その内底に子嚢が並ぶ。比較的大きい菌糸塊(子座(しざ))では数個の小房ができる。
真正子嚢菌類の被子器は、アカパンカビでは単独、サナギタケでは棍棒(こんぼう)形子座の表層に多数できるが、子実層のある空所やその開口部、および被子器外壁は菌糸の成長によって初めから形成される。
チャワンタケ類などの裸子器では、子実層が広く裸出している。広い子実層は、造嚢糸の発達によるものである。こうした造嚢糸は、すぐには子嚢を形成しないで、塊状集団、または広がった数層の菌糸組織をつくり、この部分から多数の二次造嚢糸が伸びて分岐し、すぐ上の子実層に入って子嚢をつくっていく。こうして大形子実体が形成される。広い子実層が子実体内に閉じ込められた形のものにセイヨウショウロなどがある。
[寺川博典]