翻訳|conjugation
原生動物の繊毛虫類にみられる生殖法の一つ。2個体が接着し細胞融合を起こし,核物質を相互に交換した後,分離して2個体に復帰する。配偶子間の合体copulationでは2細胞が1個体を形成し,この点で接合と異なる。接合は任意の2個体間に起こるのではなく,接合型の異なる個体間で特異的な接着が起こることによって始まる。ゲノムの交換と混合が行われ,また接合型の分化が認められることからしばしば有性生殖に対比され,その原型と考える研究者が多い。ゾウリムシの接合現象はとりわけよく研究されており,接合型を決定する物質の純化も試みられている。ゾウリムシの接合は対数増殖期にある個体群では起こらず,栄養の欠乏のように環境要因が悪化して増殖の定常期に入った個体群で起こる。一般に接合には若返り効果があると考えられる。
ゾウリムシは大核と小核を有するが,接合にあたっては,大核は消失し,小核が4個に分裂した後,その中の3個が消失して1個が残る。さらに残った1個が2個に分裂して,その中の1個が相互に交換され(移動核),他の1個はもとの個体内にとどまる(静止核)。交換後移動核と静止核は合体して新しい核(合核)を形成する。
執筆者:舘 鄰
植物では生殖細胞(配偶子)または生殖器官(配偶子囊)の合体を接合と呼ぶ。原生動物の場合と違って,接合によって生じるのは1細胞(接合子)である。大きさや形の等しい配偶子が合体する同形配偶子接合(クラミドモナス,アオミドロなど)と,形は似ているが大きさの異なる配偶子が合体する異形配偶子接合(アオサ,アオノリ,ミルなど)とがある。接合藻類や鞭毛藻類では,生殖細胞に分化していない体細胞が性を異にする体細胞と接合する場合があり,これは体細胞接合と呼ばれる。接合過程の第1の特徴として,接合は相補的な1対の接合型の間で起こることが挙げられる。クラミドモナスでは,光学顕微鏡では区別できないが,微細構造レベルでは異なる二つのタイプの配偶子がみられ,鞭毛の近くにデスモソームに似た接合型構造mating type structure(MTS)があって葉緑体遺伝子を選択的に伝播(でんぱ)する配偶子は(+)型,(+)型配偶子より単純な微細構造をもつ配偶子は(-)型と定義される。アオミドロでは,接合子のできる側の配偶子は雌,それに進入するほうの配偶子は雄とされる。配偶子としての性的能力は環境の変化に応じて誘導され,クラミドモナスでは窒素源を除いた培養液に移すことによって簡単に配偶子を誘導できる。また,多くの真核生物では両タイプの細胞をいっしょにすると,性フェロモンが分泌され,それによって配偶子の分化が誘導される。接合には性的相補型の相手を認識する過程が存在し,その認識機構は細胞表層(鞭毛,繊毛,細胞壁)にそなわっている。クラミドモナスでは(+)と(-)の配偶子を混合すると,鞭毛どうしが互いに接着し,大きな凝集塊ができる。この凝集現象が細胞間の認識機構として重要であり,これは鞭毛表面の糖タンパク質間の相互作用によるとされている。凝集塊内で相補型間の組合せができると,前述のMTSから出るアクチン繊維でつまった管が(+)型配偶子から(-)型配偶子の方向に伸びる。次いで,両者の間で膜融合が起こり,その後,核や葉緑体がそれぞれ融合して接合子が形成される。
執筆者:前田 靖男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
原生動物や下等な藻類などにみられる有性生殖の方法で、核の一部の合体や細胞の融合を行うことをいう。動物では原生動物の繊毛虫類だけにみられる現象で、普通、2個体が一時的に接着して核質の交換をしたのちふたたび分かれる。接合する両個体が同形同大のときは同形接合(ゾウリムシなど)、違うときは異形接合(ツリガネムシなど)とよぶ。そのほか、接合中に両個体が融合して1個体となる場合もあり全接合とよぶ。ゾウリムシの一種を例にすると、まず囲口部で2個体が接着し、次に両個体内で、大核(栄養核)は崩壊して消失し、小核(生殖核)は2回分裂(減数分裂)して4個(n核)になる。このうちの3個は退化するが、1個はさらに分裂して2個となる。そのうちの1個は自分の体内に残る(静止核)が、他の1個は互いに相手の個体内に移動する(移動核)。ついで静止核と移動核が合一(受精)して合核(2nの受精核)を形成し、両個体は離れる。このようにゾウリムシの接合には、減数分裂、受精核の形成、生殖核と栄養核の分化など、高等生物の有性生殖にみられる諸種の現象がある。また、ゾウリムシが接合するためには、両系統が互いに相補的な交配型である(性が異なる)こと、それらが成熟していること、二分裂増殖期を経て定常期にあることなどが必要である。なお、二分裂増殖のみを行った個体は増殖をやめ、やがて老衰して死ぬ。接合を終えた個体はいわば新しく生まれた子供であり、したがって接合は若返り現象である。
植物ではアオミドロが接合を行う。2本の糸状体が平行に並び、向かい合った細胞の間に管状の突起を出し、これを通じて一方の細胞内容が他方に移り合一する。この移動は一方の個体だけからおこり、2個体の間には性的分化が存在する。類似の接合はある種の菌類や細菌にもみられる。
[内堀雅行]
二つの材料または部材をつなぎ合わせること。一般にボルト、釘(くぎ)などによるものを機械的接合、接着剤によるものを化学的接合、接着接合というが、材料の端部どうしをいったん溶融したのちつなぎ合わせる溶接接合もある。接合された部分を接合部という。土木構造物や建築物の骨組によく用いられる鉄骨構造(鋼構造)では、リベット接合(鋲(びょう)接合)やボルト接合を用いて、いろいろな形の鋼板や形鋼(かたこう)を組み合わせて骨組を形づくってきたが、最近では、これらの接合法にかわって、高張力鋼を主材料に用いる高力ボルト接合が、溶接接合とともに鋼材の接合法の主流となった。リベット接合法は、接合しようとする二つの鋼板を重ねて穴をあけ、その中に赤熱したリベットを挿入し、リベッターにより締め付けるものであり、ボルト接合はリベット接合と同様に鋼板にあけた穴に機械用ボルトを通し、スパナやレンチで締め付ける。高力ボルト接合は、ボルト材料の強度が高いことに着目して、ボルトの締め付けを強く行うことによる鋼材接触面間の摩擦力に期待するもので、大きな耐力をもつ接合部をつくれる。
骨組部材どうしの接合部を節点とよぶことがあり、一つの節点に三つ以上の部材が集まることも少なくない。骨組に外力が作用しても、節点に集まる部材どうしの接合がしっかりしていて部材間のなす角度に変化を生じないものを剛接合といい、反対に、たとえば丁番(ちょうつがい)のような回転機構を備えて、節点に集まる部材間の角度を自由に変化させることができるものをピン接合(鉸(こう)接合、ヒンジ接合)という。トラス構造物の各節点はピン接合として設計される場合も多い。
[金多 潔]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…これによって集団内の遺伝的多様性を増すのであるが,単相世代だけしか持たない生物には遺伝的多様性を増すための別の方式がみられる。特に,細菌では接合,形質転換,形質導入という三つの方式が明らかになっている。 形質導入というのは,ある細菌(供与体)の遺伝情報がファージを介して別の細菌(受容体)に伝えられ,そこで形質発現をする現象で,ツィンダーN.ZinderとレーダーバーグJ.Lederbergがサルモネラ菌の一種であるネズミチフス菌Salmonella typhimuriumにおいて初めて発見した(1952)。…
…無性生殖は体が縦,または横に分裂して2個体になるほか,出芽する場合もある。有性生殖では多細胞動物のように精子や卵をつくるのではなく,2個体が合一して1個体になる融合とか,2個体が一時的に相接して核の一部を交換し,再び離れていく接合が行われる。
[分類]
原生動物門の系統的な分類は学派によって異なっていて,まだ一つの体系にまとまっていない。…
※「接合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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