改訂新版 世界大百科事典 「子宮頸管粘液」の意味・わかりやすい解説
子宮頸管粘液 (しきゅうけいかんねんえき)
cervical mucus
子宮頸管中を満たしている粘液。頸管粘膜の上皮細胞から分泌され,卵巣ホルモンである卵胞(または濾胞)ホルモン(エストロゲン)により増量し,黄体ホルモン(プロゲステロン)により分泌が抑制されるので,月経後しだいに増量して,排卵直前に最高の400mm3くらいに増加し,水分量,果糖,ブドウ糖などもこのときに増加し,精子が子宮頸管を通って子宮内に進入するのを助ける。排卵後黄体期に入ると急減してゼロに近くなり,妊娠中も少ない。抗菌作用もあり,細菌が子宮内に入るのを防止する。卵胞期と排卵期の粘液をガラス板にのせ,乾燥すると,シダ葉状の美しい塩化ナトリウムNaClの結晶形成がみられる。排卵期の頸管粘液の量が少なすぎたり性状が不良だと,不妊の原因になることがある。また,頸管粘液中に精子不動化抗体が分泌されるための精子免疫による不妊症も少数例ながらみられる。頸管粘液の精子受容性はヒューナー試験Hühner test,ミラー=クルツロック試験Miller-Kurzrok testでしらべることができる。
→子宮 →不妊症
執筆者:五十嵐 正雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報