改訂新版 世界大百科事典 「孝義録」の意味・わかりやすい解説
孝義録 (こうぎろく)
江戸時代の孝子,節婦,忠僕および奇特者の記録。50巻。1789年(寛政1),寛政改革の民衆教化策の一環として,幕府は江戸初期以来の全国の農民・町人の善行表彰者の報告を命じ,さらに98年追加報告させて,それらを昌平坂学問所に集めて編集し,1801年(享和1)官版として出版した。所載の表彰者総数8614名,表彰の時期は1602年(慶長7)から1798年までの約2世紀に及ぶが,全体の81%,6985名は宝暦から寛政までの18世紀後半に表彰されたもの。また894名についてはその善行が詳述されている。刊行後,幕府はその続編の編纂を企画,追加報告を求めたが,実際には編集・刊行の運びにはならず,1848年(嘉永1)林復斎らの手で整理されるにとどまった。これが《続編孝義録料》で,全100巻のうち現存するのは90巻(国立公文書館蔵)。両者とも視点を変えれば,貴重な民衆生活史料である。
執筆者:池上 彰彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報